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3.商標 アーカイブ

2011年12月06日

商標にはローマ字を使うことはできるのですか。また「商号」と「商標」との違いはどのようなものですか?

商標にはローマ字は勿論、漢字、ひらがな、カタカナ、記号等を使用できる。 「商号」と「商標」との違いを次の表に示す。

商号 商標
保護法

商法

商標法

定義

商人(会社)が自己を表すための名称

商品、役務(サービス)の識別標識

構成要素

文字(漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字)

文字(漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字、記号等)、図形

保護期間

無期限

登録から10年但し、更新できる

効力範囲

同一市町村、特別区、政令指定都市の各区

日本全国

具体例

ソニー株式会社
ヤマト運輸株式会社

SONY
ヤマト運輸の「黒猫の図形」

商号を商標登録できるのでしょうか?

自社の商品(サービス業の場合はサービス)と、他社の商品(サービス)とを区別する目印として機能するものであれば商標登録をすることが可能である。商号は 「株式会社」のように商人が自己を表すために用いる名称で、商法上登記されることにより同一市町村において同一営業について権利が発生する。しかし実際の ビジネスでは、商号がその商人の提供する商品(サービス)を間接的に示し、商品(サービス)を区別する目印である商標と同じような役割を果たすことがあ る。商号と商標を一致させるとブランドだけではなく企業イメージの向上にも役立つ。ソニー株式会社による登録商標「SONY(ソニー)」の使用は、その好 例である。

旧法によって登録された商標の指定商品の書換登録申請が開始されたと聞きましたが、その内容はどのようなものなのでしょうか?

現在、商標区分は明治21年法同42年法大正10年法昭和34年法平成3年法の 国際分類に基づく区分まで5種類のものが併存しているため、検索、調査等の面で極めて煩雑である。さらに、明治、大正期の商品区分の権利範囲が不明確であ る等の問題が指摘されている。そこで、平成4年3月31日までに出願された商標登録出願について、旧区分に従って登録された指定商品から現行区分(平成3 年法による国際分類)に書き換える「指定商品の書換)を行うことにした。書換をせずに更新登録を行った場合には、次回(10年後)の更新登録ができないの で、今後も長期間使用する商標については必ず書換が必要である。書換申請は、商標権の満了日の前6ヶ月から満了日の後1年の間にしなくてはならない。書換が必要な商標権者には、特許庁から「書換登録申請時期のお知らせ」のハガキが郵送されることになっている。

小売等役務商標の出願の受付が開始されたと聞きましたが、その内容を教えてください。

小売等役務商標だけを説明しても解り難いので、まず商標登録制度について概説する。
(1)商標は、「ABCストア」等の文字だけでなく、キャラクター等の図形なども含まれる。商標について独占使用を希望する商品(役務)を指定して特許庁 に商標登録出願する。独占使用を希望する商品(役務)のことを指定商品(役務)といい、商品または役務の区分に従って出願書類に記載することになってい る。言い換えれば商標登録出願は漠然と商標(マーク)の登録を求めるものではなく、使用を欲する商品(役務)を指定して、その範囲において登録を求める仕 組みになっている。
商品または役務の区分は1類から45類まであり、1類から34類までが商品の区分で、35類から45類までが役務の区分である。商品の区分は「菓子及びパ ン」(30類)のように商品(品物)を対象としている。また役務の区分は「車両による輸送」(39類)のように役務(行為)を対象としている。なお、商品 または役務の区分は特許庁のホームページに掲載されている。

 (2)今回の改正では、役務の区分の一つである35類に「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等が加わった。
これによって、小売業者、卸売業者(以下、小売業者等という。)が顧客に対して行うサービスに使用する商標の登録が可能になった。
小売業者等には、デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター、八百屋、魚屋、肉屋、眼鏡店等、あらゆる小売業者等が含まれる。また、カタログ、インターネット等を利用した通信販売も含まれる。
「顧客に対する便益の提供」とは、例えばデパートの店舗における品揃え、商品説明、陳列が挙げられる。通信販売会社では顧客が商品を選びやすいように、商 品のレイアウトを工夫したカタログの提供、インターネットを利用した通信販売では、顧客が商品を選びやすいようなサイトの提供が挙げられる。

(3)商標は、小売業者等が店舗の看板、店員の制服、レジ袋、包装紙、商品の値札、価格表、レシート、買い物かご等に表示するもの、更に店舗内の売場の名称等が該当する。

(4) 多くの小売等役務商標の出願が4月1日に集中する混乱を避けるため、平成19年4月1日から6月30日までの間に出願された小売等役務商標の出願は、同日 に出願されたものとして取り扱われる。但し、同日に出願されたものとして取り扱われるのは小売等役務を指定した範囲どうしだけであり、自己の出願の小売等 役務を指定した範囲と、他人の出願の商品を指定した範囲との間では、先願主義(早く出願した者勝ち)が適用される。
小売等役務商標の出願は必ず登録されるものではなく、他の商標登録出願と同様に特許庁における審査にパスすることが登録の条件となる。

(5) 商標登録が認められた場合は、登録商標を登録された商品(役務)の範囲で自由に使用でき、またその類似範囲で他人の使用を排除することができる。即ち、商標権は独占排他権として機能することになる。

当社が従来から使用している小売等役務商標が他人によって登録された場合は、その商標の使用ができなくなってしまうのでしょうか?

平成19年4月1日より前から使用してきた商標であれば、継続して使用すること(継続的使用権)が認められる。ただし、平成19年4月1日より前から使用してきた事実の証明を求められる場合がある。
また、商標の使用を継続して認められる場合でも、商標権者から需要者の混同を避けるための表示(地名等)を求められることがある。この場合には当事者どうしで話し合うことになっている。

既に商品商標の商標権を取得している場合でも、小売業者等は小売等役務商標の商標権を取得する必要があるのでしょうか?

商品商標の商標権と小売等役務商標の商標権の両方を取得しなければならないことはない。ただし、小売等役務商標の商標権を取得すればより手厚い保護を受ける ことができる。商標の継続的使用権で足りるとするのか、小売等役務商標の商標権を取得するのかは各人(各社)で判断する事柄である。

商標登録出願が特許庁の審査にパスするためには、どのような要件を満たすことが必要なのでしょうか?

(1)普通名称、記述的商標などでないこと。
商標は自己の商品(役務)と他人の商品(役務)とを区別するための標識であることから、このような区別に役立たない普通名称等は登録が拒絶されることになっている。
例えば、商品「鉛筆」について商標「鉛筆」は普通名称なので拒絶されることになる。普通名称であるか否かは指定した商品(役務)との関係で判断され、指定役務が「航空機による輸送」である場合、「空輸」は普通名称とされる。
また商品の産地、品質、原材料、効能、数量等を示す記述的商標も拒絶されることになる。「スーパー」、「1ダース」、「静岡」等は記述的商標に該当する。
その他、商品「清酒」についての「正宗」のような慣用商標、「伊藤」のようなありふれた氏、単なる「○」のような極めて簡単でありふれた商標等は、拒絶されることになる。

(2)他人の登録商標と抵触する関係にないこと。
抵触する関係とは、すでに登録されている商標と①商標同一・商品同一、②商標類似・商品同一、③商標類似・商品類似の3つの関係をいう。
商標の類似には、「ソニー」と「ソミー」のように呼び名が似ている「称呼類似」、「王様」と「キング」のように意味が似ている(同じ)「観念類似」、下図に示すマークのように見た目が似ている「外観類似」がある。
商品の類似とは、「クッキー」と「チョコレート」のように同種の商品となる関係のことである。
商標権を取得できれば、商標権者は指定商品(指定役務)について登録商標を独占的に使用でき、類似範囲において他人が勝手に使用するのを排除することができる。
参考文献 商標 第3版(網野 誠 著 株式会社有斐閣発行)

外観類似

長期に渡って使用してきた自社の商品名がありますが、この商品名について、新規の取引先から商標登録をしているのか、という質問を受けました。どういうことなのでしょうか?

商品名は商標として捉えられ、他人の登録商標を無断で使用すると商標権の侵害になり、損害賠償請求等を受けることがある。これを取引先が心配したのだと思われる。
他人の商標権を侵害していることを知らないで、長期に渡って商標を使用していることもあるので、まずは他人の商標権を侵害していないか否か、出願した場合に商標登録を受けられそうであるか否かの調査を行うべきである。
他人の商標権を侵害しているという調査結果であれば、商標の使用を止めて、新たな商標を考えることが賢明である。
登録の可能性があるとの調査結果であれば商標登録出願を行う。そして、特許庁における審査にパスし、且つ登録料を納付すれば商標権を取得することができる。
商標登録出願は、商標と、この商標を使用する商品(役務)とを願書に記載して行う必要がある。例えば「ABC」という商標と、「菓子」という商品とを願書に記載する。
商品(役務)の記載は特許庁で決められた区分に従って行う。この区分は45あり、1類~34類には商品が列挙され、35類~45類には役務、例えば銀行の「預金の受入れ」、ホテルの「宿泊施設の提供」が列挙されている。

日本で商標登録を受け、日本国内でのみ販売してきた商品を輸出しようと思います。日本で商標登録を受けていれば、その登録商標をそのまま輸出した国において使用しても大丈夫なのでしょうか?

日本の商標権の効力は日本国内にしか及ばないので、日本で商標登録を受けていても、外国で商標を付した商品を販売等すると、その外国で他人の商標権を侵害し てしまうおそれもある。従って、日本において商標登録されていても、その登録商標を外国でそのまま使用してもよいことにはならない。よって、輸出する国に おいて商標登録を受けることが望ましい。
更に、商標登録出願は原則として各国ごとに行われ、その審査の基準も各国ごとに異なる。国によっては日本語の商標を「文字」としてではなく「図形」のよう に扱われることもあり、現地の言葉に翻訳した商標を出願した方がよい場合がある。また出願の際に指定する商品の概念は国ごとに異なり、その商品の指定の仕 方も異なるので、実際に輸出する商品と権利を取得する商品とが異なってしまうことがないように注意が必要だ。
また、国によってはその国で商標を実際に使用していないと商標登録を認めない国があり、また一旦登録が認められても一定の期間内にその国おける登録商標の 使用を証明しないと商標登録が取り消されることもある。このように自国における商標の使用を強く求める考え方を使用主義といい、この使用主義をとる国とし てはアメリカ、カナダ等がある。
自国における使用を求めないで登録する考え方を登録主義という。ただし、各国の商標法は完全な使用主義または完全な登録主義を採用しているということはなく、使用主義と登録主義とをミックスしてバランスをとったかたちで構成されている。

自社商品である酒の名称について日本においては商標権を取得し、日本国内で販売してきましたが、この商品を輸出することになりました。日本で商標権を取得していれば、その効力は輸出国においても及ぶのでしょうか?

商標権は原則として各国ごとに取得し、その効力も各国ごとに及ぶ。従って、日本で商標権を取得しても、その効力は外国には及ばない。輸出国において自社の商標(ブランド)を守りたいということであれば、その国において商標権を取得する必要がある。
外国で商標権を取得する場合、原則として各国(中国、アメリカ等)の特許庁が審査を行う。これらの特許庁における審査は各国ごとに定められた商標法に基づいて行われる。
商標登録出願を行う場合は、商標(マーク)と、この商標を使用する商品・役務を指定する必要がある。例えば、商標については日本語で表したものにするか、 その国の言語で表したものにするか等を検討する必要がある。日本語の文字で外国へ商標登録出願した場合、文字商標ではなく、図形商標として取り扱われてし まい、十分な法的保護を受けられないおそれもあるので、注意が必要だ。
また、商品・役務については多くの国で商品・役務をカテゴリーごとに分けた区分表を採用するが、この区分表は各国ごとに異なり、また出願対象にしようとする商品・役務がどの区分に属するかの判断基準も異なり、更に商品・役務の表現方法も異なるので注意が必要だ。
また、各国ごとに商標登録を認める条件が異なる。例えば、アメリカやカナダにおいては、原則としてその国において商標を実際に使用していることが登録の条件になる。
更に、商標権を継続して維持するためには、その国において登録商標を指定商品に使用していることの証明(使用証明)を特許庁に提出しなくてはならない国もある。例えば、アメリカ、フィリピンがこれに当たる。

中国の商標登録制度はどのようなものなのでしょうか。 自社製品である緑茶は日本国内で名の通ったもので、その名称を日本国内において商標登録をしていますが、この緑茶を中国へ輸出しようと考えています。中国においても商標登録した方がいいのでしょうか?

(1)最近、中国において日本の有名な商標や産地名などが商標登録されたという報道がなされている。確かに中国は国の規模が桁外れに大きく、商標登 録についても日本の感覚をそのまま持ち込むことはできない。商標登録出願の件数も中国では1年に100万件以上であり、世界一である。この出願件数は日本 の約10倍である。

(2)商標登録出願では中国商標局に出願書類を提出し、審査にパスしたものについて商標登録が認められる。この出願書類には出願人、商標、指定商品・役務 等を記載する必要がある。指定商品・役務は区分表に従って記載する。因みに「緑茶」は第30類「茶及び茶葉代用品」に含まれる。
また、先願主義を採用しており、先に出願されたものについて優先して登録される。

(3)審査手続は、「中国商標出願の経過」に示すように、出願→審査→公告→登録で手続が進行する。
公告後3ヶ月以内に異議申立を行うことができ、異議申立に対し出願人は答弁書を提出して反論することが可能である。そして、異議決定がされて商標登録または拒絶査定される。
商標登録された場合の存続期間は10年で、更新が可能である。また、拒絶査定に対しては審判を請求して争うことができる。

(4)中国商標法では日本の商標法で規定されているような「先使用権」は認められていない。「先使用権」とは使用した結果として需要者の間で広く知られた 場合、他人が商標権を取得しても、商標を継続して使用できるという権利のことである。いわば商標使用によって生じる既得権といえるものだ。中国では「先使 用権」が認められていないので、日本に比べて商標登録する必要性がより高いと言えそうである。

(5)中国に商品を輸出しようとする場合は、中国において商標登録をすべきである。これは国の内外を問わず自社ブランドを守ることはビジネスの基本であり、そのための手段が商標登録だからだ。

2012年02月27日

郵便事業株式会社が「ゆうメール」の名称を使用していることに対し、札幌にあるメールサービス会社が自社の商標権を侵害しているとして裁判を起こし、郵便事業株式会社に「ゆうメール」の使用中止を命じる判決が出たとの新聞記事を読みましたが、詳しい内容を教えてください。

(1)メールサービス会社は、商標「ゆうメール」の商標権を、第35類「各戸に対する広告物の配布,広告,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,広告用具の貸与」について取得している(以下、本件商標権という)。この本件商標権を郵便事業株式会社が侵害しているというのである。
商標登録の仕組みを簡単に説明する。商標登録は名称や図形からなる商標を漠然と登録するのではなく、具体的な商品や役務を指定して、この指定した商品や役務について商標を独占的に使用する権利を与えるものである。
商品や役務については区分が決められており、この区分は第1類~第45類まである。第1類~第34類が商品の区分であり、第35類~第45類が役務の区分となっている。
ここでいう商品とは「化粧品(第4類)」「菓子及びパン(第30類)」など、簡単に言えば品物である。ただし、「コンピュータソフトウエア(第9類)」は形がなくても商品である。
役務とは、上記の「広告物の配布」即ち広告物を配布してあげるというサービスのことであり、第35類~第45類の役務の区分において使用される商標のことをサービスマーク(役務商標)という。例えば、サービスマークにはクロネコヤマトの宅急便の「クロネコの図形」等がある。「クロネコの図形」は荷物を運んであげるというサービスに使用されている。

(2)上記判決では、『郵便事業株式会社は「ゆうメール」又は「配達地域指定ゆうメール」を付した広告物を各戸に配布等してはならない。更に「ゆうメール」を付したカタログを廃棄せよ。』とされている。すなわち、「ゆうメール」又は「配達地域指定ゆうメール」は本件商標権の商標「ゆうメール」に同一・類似し、且つ、郵便事業株式会社が行っている行為が指定役務「各戸に対する広告物の配布等」に対し同一・類似であるから、本件商標権を侵害しているとされ、郵便事業株式会社に上記の行為を中止するように命じたのである。
商標権侵害となるためには、商標が同一・類似で、しかも商標を使用している役務(商品)が同一・類似していることが条件となる。従って、同一商標を非類似の役務(商品)に使用しても商標権侵害とはならない。例えば、「ゆうメール」をレストランの役務である「飲食物の提供(第43類)」に使用しても本件商標権の侵害とはならない。ただし、他人の信用にただ乗りしようとする場合は不正競争防止法等を違反することがあるので注意が必要である。

(3)裁判において、郵便事業株式会社は、自らが行っているのは「荷物の運送」であって、「広告物の配布」は行っていない旨を主張したが、郵便事業株式会社が行っているサービスは本件商標権の指定役務(サービス)と類似するとして、この主張は認められなかった。すなわち、郵便事業株式会社の行為は使用している商標が同一(又は類似)で、且つ役務が類似しているとされたのである。

(4)また、郵便事業株式会社は本件商標権より先に「ゆうパック」を商標登録していたことを理由に本件商標権は無効である旨を主張したが、「ゆうパック」と「ゆうメール」とは非類似であるとして認められなかった。すなわち、役務が同一・類似でも、商標が非類似とされたわけである。このように、商標法上の抵触関係は商標だけでなく、役務(商品)との関係も比較して決められる。

(5)郵便事業株式会社は判決を不服として同日控訴している。
 どのような企業にとっても訴訟は負担であり、できれば避けたいものである。他人の商標権を侵害しないようにするためには、自らが実際に売る商品または行う役務について正確に把握し、この商品、役務について実際に使用する商標を出願して登録しておくことが必要である。

2012年10月22日

自社の商品名やシンボルマーク(図形)について商標登録をしたいと考えています。出願書類に指定商品(役務)を記載する必要があると聞きましたが、どういう意味なのでしょうか?

商標登録は漠然と名称等を登録するのではなく、商標を使用する商品や役務(サービス)を指定して商標登録出願を行い、他人の商標権と抵触しない範囲において商標登録が認められる。商品(役務)の指定は第1類から第45類まである商品及び役務の区分に従って行う。商標登録出願において、どのような商品(役務)を指定するかは、極めて重要となる。商標登録されても指定商品(役務)が異なれば商標権の効力が及ばないからである。商標権は商標が同一・類似で、しかも商品(役務)が同一・類似でなければ効力が及ばない。従って、他の企業が同じ商標を使用しているにも拘らず、指定商品(役務)が異なることによって商標権を行使することができない場合がある。

指定商品(役務)を考える場合、次のようなことを注意すべきである。
(1)商品(役務)を多方面から捉える。例えば大豆を主原料とする食品で、菓子と捉えることもできるが、穀物の加工品とも捉えることができるようなものである場合は、「第30類 菓子」と「第30類 穀物の加工品」の両方を指定することを考慮すべきである。
(2)商品と役務の両面から考えてみる。例えば雑誌を媒体として広告を行っている場合は、「第35類 広告業」だけでなく、「第16類 印刷物」も指定すべきではないかなどの検討が必要だ。
(3)複数の役務(商品)が存在していないかを確認する。例えばホテル業を営んでいる場合、「第43類 宿泊施設の提供」がメインになるが、レストランを併設していれば「第43類 飲食物の提供」も指定する必要がある。更に、ブライダルに関する業務を行っているということになると「第45類 婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を指定する必要がでてくる。

どのような商品(役務)を指定するかは、商標を使用する商品(役務)や自社の業務内容などを踏まえてよく検討することが必要である。

2013年09月10日

「富士山」が世界文化遺産に登録されたので、当社では「富士山」の名称で新商品を発売しようと考えています。「富士山」を商品名として使用しても問題ないでしょうか?山や川などの名称は商品に使用しても問題がないと聞いたことがありますが、「富士山」はこれに該当しないのでしょうか?

「富士山」を商品名として使用すると他人の商標権を侵害するおそれがある。
「富士山」は、第9類「コンピュータプログラム、電気通信機械器具等」、第24類「織物、不織布等」、第26類「テープ、リボン等」、第30類 「食品香料、茶、香辛料等」、第29類「食肉、食用魚介類、肉製品、加工水産物等」、第30類「米、食用粉類等」、第32類「ビール、日本酒、洋酒等」などについて商標登録が認められている。
「富士山」はこれらの指定商品について登録商標として認められているのだから、「富士山」を商品名として使用すると他人の商標権を侵害する場合があることになる。

「富士山」のような山の名称は、指定商品(役務)によって自他商品(役務)識別力が変動するという特殊な面がある。
例えば、商標法上「その商品」の「産地、販売地等」は商標登録が認められないと規定されているため、出願書類に記載する「指定商品」が「富士山」を産地や販売地としそうなものであれば商標登録が認められない。このような場合は誰でも「富士山」を使用して良いということになると判断される。逆に「富士山」が産地や販売地ではないとされる商品であれば商標登録が認められる可能性があり、他人の商標権を侵害する場合がある。
川の名称、例えば「四万十川」は第11類「ガス湯沸かし器、調理台等」、第24類「織物等」、第30類「菓子、パン」、第33類「日本酒、洋酒等」などについて商標登録が認められている。これらの商品が「四万十川」を産地とするものではないので、商標登録が認められたわけだが、指定商品が「うなぎ」である場合は「四万十川」は産地となるので、特許庁の審査で拒絶されると思われる。
従って、山や川などの名称は商品に使用しても問題がないというのは大きな間違いである。山や川などの名称が産地や販売地と考えられるか否か、この判断は専門家でもかなり難しい。他人の商標権を侵害してしまうトラブルを未然に防止するためにも、事前の調査や商標出願をしないまま不用意に商品名に山や川などの名称を使用することは避けた方が賢明である。


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他人が「富士山」を商標登録している場合、「富士山」がつく商標は全てその指定商品について使用することが禁止されるのでしょうか?

いいえ、そんなことはない。「富士山」と非類似の商標であれば、指定商品と同じ商品について使用しても商標権の侵害にはならない。
登録商標と同一または類似商標を指定商品に使用すると商標権侵害となる。類似商標とは、称呼、観念および外観のうち少なくとも一つが似た関係となる商標をいう。
称呼類似とは呼び名が似ていることをいい、例えば「ソニー」と「ソミー」は称呼類似となる。観念類似とは意味が似ていることをいい、例えば「王様」と「キング」は観念類似となる。外観類似とは見た目が似ていることをいい、主として図形商標が似ているか、似ていないかを判断する場合に問題となる。
「富士山」は、「MT.FUJI(マウント フジ)」など観念類似についても問題となる場合もあるが、称呼類似が問題となることが多いと思われる。そこで、富士山を含んでいても「富士山」と非類似となる商標について調べてみた。
「ビール」や「洋酒等」について「富士山」が商標登録されているが、同じ指定商品について「富士山の地」、「富士山赤富士」、「富士山ごうりき」、「富士山徐福」、「富士山自然」、「富士山ご来光ビール」、「富士山の金山」、「富士山埋蔵金」などが登録されている。これらの商標と「富士山」は特許庁の審査で非類似とされたので、商標登録が認められたのである。このように、「富士山」に言葉を加えて、縁起の良い名称をつくり、これを商標登録するのも一つの手ではないかと思う。
なお、商標が同一、類似でも商品が非類似であれば商標権侵害にはならない。商品が類似するかどうかは販売場所などを勘案して判断されるが、例えば、菓子の「ケーキ」と「クッキー」は類似であると判断され、「ケーキ」と「鉛筆」は非類似であると判断される。


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2014年04月08日

最近、オリンピックが話題になっています。2020年には東京でオリンピックが開催されることが決定し、最近ではロシアのソチで行われた冬季オリンピックで多くの日本人選手が活躍しました。
ところで、「オリンピック」や「OLYMPIC」は商標登録されているのでしょうか?

「オリンピック」や「OLYMPIC」は国際オリンピック委員会(IOC)や日本オリンピック委員会(JOC)によって商標登録されている。IOCやJOC以外の者が「オリンピック」「OLYMPIC」を商標登録出願した場合は商標法第4条第1項第6号の規定によって拒絶されることになっている。この規定は「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」は商標登録を認めないとするものである。この規定に該当する商標としては「オリンピック」のほか、 IOC、JOC、ボーイスカウト、 JETRO等があげられる。これらの商標を一私人に独占させることは権威尊重、国際信義の上から好ましくないので、商標登録を認めないこととした。
一方、この規定は、出願人が公益に関する団体などである場合は適用されないことになっているので、IOCやJOCは「オリンピック」や「OLYMPIC」に関する商標登録を受けているのである。このほか、IOC、JOCは五輪の図形についても商標登録を行っており、JOCは「がんばれ!ニッポン!」について商標登録している。
なお、「オリンピック」「OLYMPIC」ズバリでなくても、オリンピックを利用しようとする商標については、公序良俗に反するとされたり(商標法4条1項7号)、出所の混同を生じる可能性があるとされたり(同4条1項15号)、品質誤認を生じるおそれがあるとされたりして(同4条1項16号)、拒絶される可能性があるので注意が必要である。
ところで、東京オリンピック招致のためのプレゼンテーションの中で話題になった「おもてなし」であるが、これは、第7類「化学機械器具、風水力機械器具等」 第30類「菓子、パン」 第33類「日本酒、洋酒等」 第37類「建設工事等」などについて、一般企業によって商標登録されている。「おもてなし」は自他商品(役務)識別標識として機能する、言わば普通の商標だからだ。

2014年11月17日

自社で新商品を発売することになり、この新商品に斬新な名称を付けようと思っています。この商品名を付けるに当たって法的な問題が生じる可能性があるのでしょうか?

(1)商品名の使用が他人の商標権を侵害する行為に当たる可能性がある。すなわち、その商品名が他人の登録商標と同一または類似で、使用する商品が指定商品と同一または類似する場合には、他人の商標権を侵害することになる。
(2)例えば、商品名が「○○○」で、使用する商品が「クッキー」である場合に、他人の登録商標が商品名と同一の「○○○」または類似の「○○△」で指定商品(商標権が取得されている商品)が「クッキー」である場合は商標権侵害であると考えられる。また、指定商品が「クッキー」ではなく「菓子」と記載されている場合も商標権の侵害であると考えられる。「菓子」には「クッキー」のほか、「ケーキ」、「チョコレート」などの洋菓子、更に「饅頭」、「羊かん」などの和菓子も含まれている。すなわち、「ケーキ」、「チョコレート」、「饅頭」、「羊かん」は互いに類似する商品であると類似商品・役務審査基準において推定されている。商品名が登録商標と類似する「○○△」である場合も商標権侵害に該当すると判断される。
(3)商品名が登録商標と非類似の「×××」である場合は商標権侵害にはならない。
指定商品が「文房具」である場合、登録商標が「○○○」または「○○△」であっても商標権の侵害にはならない。商品が非類似だからだ。
 商標が自社商品と他人の商品とを識別するための標識であることから、商品を買いに行った顧客が商品を間違って購入してしまいそうな範囲に商標権の効力が及ぶようにしている。簡単に言えば、商標が全く異なる「○○○」と「×××」が「クッキー」に付されて売り場に並べられていても間違って買ってしまうことはないし、商標「○○○」が「クッキー」に付されて売られており、同じ商標「○○○」が文房具である「ノート」に付されて売られていても、「クッキー」と「ノート」を間違って買ってしまうことはないので、商品が非類似であれば商標権侵害にはならない。
(4)従って、商品名が、①商標同一・商品同一 ②商標同一・商品類似 ③商標類似・商品類似の場合に他人の商標権侵害に該当すると判断される。
 商標類似には、称呼類似(発音が似ている)例えば「ソニー」と「ソミー」、観念類似(意味が同じ)例えば「王様」と「KING」、外観類似(主に図形商標が対象で見間違える程よく似ている図形)の三態様がある。
 商品類似は商品の販売場所が同じであるかなどを考慮して決められる。例えば、「クッキー」と「チョコレート」はスーパーマーケットなどの菓子売り場に並べて売られているので、互いに類似する商品となる。
(5)商標権侵害に該当しなくても、例えば有名なファッションブランドと同じ名称を「クッキー」の商品名にした場合は他人の信用にただ乗りしようとしていると判断され、不正競争防止法違反になるおそれがあるので注意が必要だ。

 従って、新商品の商品名については他人の商標権を調査して、自社が商標権を取得すべきである。

2015年06月29日

商標法の改正で音、色などについて商標登録が可能になったと聞きましたが、詳しい内容を教えてください。

平成27年4月1日の法改正で保護対象として追加された商標は次の5つである。

(1)動き商標 (2)ホログラム商標 (3)色彩のみからなる商標 (4)音商標 (5)位置商標
従来は、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合が商標法によって保護される対象となっていたが、上記した商標も自他商品識別標識として機能するということで保護対象に加えられた。

ところで、商標を法律まで設けて保護しているのはなぜだろうか。皆さんが日々買い物をするときのことを思い浮かべて頂きたい。例えば、デジタルカメラを買おうとしたとき、「Canon(キヤノン)」、「Nikon(ニコン)」、「CASIO(カシオ)」…という商標を目印にしないだろうか。チョコレートを買おうとしたとき、「LOTTE(ロッテ)」、「meiji(明治)」、「FUJIYA(不二家)」…という商標を目印にしないだろうか。これは商標が自他商品識別標識であり、出所表示機能、品質保証機能を発揮しているからだ。つまり、商標は自社商品と他社商品とを区別する標識であり、その結果、商品の出所(会社の所在地までは分からなくても、あの会社の商品であると分かる程度の出所)を表示する機能や、あの会社製なら安心できる品質であろうと顧客に思わせる機能を発揮している。
出所表示機能や品質保証機能をより強力に発揮できる商標ほどブランド力が強く、企業にとって役に立つことになる。ではブランド力を強くするためにはどうしたらいいのだろうか。商標に業務上の信用を化体(蓄積)させることだ。すなわち、良い商品を販売することで、それを買った顧客に、あの商品をまた買いたいと思ってもらうことだ。更に、種々の広告媒体を利用して商品を宣伝することである。
ただし、商標がないと、言わば「名無しの権兵衛」の商品となってしまい、顧客が良い商品だと思ってくれても、その顧客が次にその商品を探すときの目印がないことになる。更に、言い換えれば、商標がないということは業務上の信用を化体させるための器がないということになる。
それで、企業は商標を設けて、この商標に業務上の信用を化体させるべく努力している。一方、その商標を勝手に使う者が現れて偽物を売られたのでは、商標に業務上の信用を化体させるために頑張ってきた企業の信用を傷つけることになる。偽物は大概粗悪品なので、商標を目印に顧客が本物だと思って偽物を買った場合、顧客の利益も害されてしまう。そこで、商標法によって商標権者のみに登録商標を独占使用する権限を与えて、偽物に登録商標を使用させないようにしている。
従来の文字、図形、記号等以外でも、上記(1)~(5)は世の中で自他商品識別標識として機能しているから、商標登録により保護しようというのが、今回の商標法改正の趣旨なのだ。因みに米国等では既にこれらを対象とした商標登録が認められている。

(1) 動き商標とは、文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標のことである。
動き商標としては、20世紀フォックス社の「20th CENTURY FOX の立体にライトが照射される動画」が米国で登録されている。(米国登録第1928423号)


(2) ホログラム商標とは、文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標である。
ホログラム商標としては、American Express社のクレジットカードの中央に付されたホログラムが米国で登録されている。(米国登録第3045251号)


(3) 色彩のみからなる商標とは、単色又は複数の色彩の組合せからなる商標(これまでの図形等と色彩が結合したものではない商標)である。
色彩のみからなる商標としては、株式会社トンボ鉛筆の上から青・白・黒が米国で登録されている。(米国登録第3252941号)

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(4) 音の商標とは、音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標である。
音の商標としては、久光製薬株式会社の「ヒサミツ」の社名を乗せたメロディーが欧州で登録されている。(欧州登録第2529618号)

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(5) 位置商標とは、図形等の商標であって、商品等に付す位置が特定される商標である。
位置商標としては、PRADA社が履物のかかとに赤いラインを付した位置が欧州共同体商標(CTM)として登録されている。(CTM登録第1027747号)
位置の商標は解り難いので解説すると、赤いラインそのものはありふれた形態なので自他商品識別力を発揮し難いが、履物のかかと(位置)に付することでPRADAの商品だと顧客が認識できる、すなわち自他商品識別力を発揮し商標として機能することになる。それ故に位置の商標ということになるわけだ。

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(参考文献 「新しいタイプの商標の保護制度」 特許庁)

2015年10月21日

2020年東京オリンピックのエンブレムに関する報道の中に著作権、商標権という言葉が度々出てきますが、これらはどのような権利なのでしょうか。

(1)著作権について説明する。
(著作権の発生)
 著作権は、著作物を創作することにより発生する。著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
 エンブレムに限らず、小説、論文、絵画、楽曲等が著作権によって保護される。著作権は、権利の取得にあたって役所などに届け出る必要はなく、著作物を創作したときに発生する。これを無方式主義という。
 子供が漫画を描いても、それが著作物であれば著作権が発生することになる。
(著作権の内容)
 著作権は、「財産権としての著作権」と「著作者人格権」の2つに分けられる。
 「財産権としての著作権」
 例えば、エンブレムを創作したデザイナーが、このエンブレムの使用を希望する企業と契約して使用料を得る場合が「財産権としての著作権」の行使ということになる。エンブレムを企業の商品に付す、すなわちデザイナーがエンブレムの複製を第三者に認めることで利益を得るわけだ。これを複製権といい、著作権制度の中心となる。
 「財産権としての著作権」の存続期間は原則として著作者の死後50年で終了する。この「財産権としての著作権」は譲渡することができる。従って、会社がデザイナーからエンブレムに関する「財産権としての著作権」を譲渡してもらい、この譲渡してもらった「財産権としての著作権」に基づいて第三者へエンブレムの使用を許諾して、使用料を得ることもできる。
 「著作者人格権」
 例えば、デザイナー(著作者)に無断でエンブレムの一部を変更して使用すると、「著作者人格権」を侵害するおそれがある。デザイナーの人格的利益を害することになるからだ。「著作者人格権」は著作者の死亡によって消滅する。「著作者人格権」は譲渡することができない。デザイナーの人格的利益を護るものであり、一身専属的なものだからだ。
 このように著作権が一般に解り難い理由は、「財産権としての著作権」と「著作者人格権」という2つの性質をもっているからだと思われる。
(著作権の侵害)
 著作権侵害というためには、「依拠性」と「類似性」が必要であると考えられている。
 「依拠性」とは、他人の著作物に基づいて創作されたことをいい、例えばデザイナーが他人のエンブレムを見て、これに基づいてエンブレムをデザインしたのであれば「依拠性」があり、まったく知らないでエンブレムをデザインしたのであれば「依拠性」がないということになる。このことから著作権は相対的権利であるといわれる。
 「類似性」とは、簡単に言えば似ていることであるが、例えばエンブレムの形状が似ているだけで類似性があるとは言い切れない。エンブレムの表現形式の本質的な特徴が似ていなければ類似性がないとされると考えられる。

(2)商標権について説明する。
(商標権の発生)
 商標権は、特許庁に商標登録出願を行い、審査にパスし、更に登録料を納付することで発生する。商標とは、事業者が自己の商品・役務(サービス)を他人のものと区別するために使用するマーク(識別標識)である。
 エンブレムに限らず、文字、記号、立体的な形状等も商標となる。
 商標権を取得するためには上記のように出願が必要であり、これを方式主義という。
(商標権の内容)
 商標権は、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標を使用する権利を専有することを内容としている。すなわち、登録商標を正当な権限のない他人が指定商品又は指定役務に使用することは認められない。商標権が独占排他権と呼ばれる所以である。
 なお、指定商品(指定役務)について使用を許諾する使用権を設定することも可能である。
 商標権の存続期間は設定登録の日から10年である。ただし、更新登録申請によって更新でき、20年、30年、40年…存続させることが可能である。従って、半永久的権利ということができる。
(商標権の侵害)
 登録商標や登録商標に類似する商標を指定商品(指定役務)や指定商品(指定役務)に類似する商品(役務)に使用すると商標権侵害となる。商標権は独占排他権であり、併存を認めない絶対的権利である。
 例えば、エンブレムについて菓子を指定商品とした商標権が存在する場合、第三者が無断で登録商標であるエンブレムを菓子に使用すると商標権侵害になる。ただし、エンブレムを文房具に使用しても商標権侵害にはならない。菓子と文房具は異なる商品であり、商標権の効力範囲を構成する指定商品についての使用ではないからだ。
 登録商標と類似する商標を指定商品(指定役務)に類似する商品(役務)に使用しても商標権侵害であるとみなされる。

(3)上記のように著作権と商標権は似て非なるものであるともいえるが、エンブレムは著作権と商標権のいずれによっても保護される。逆に言えばエンブレムは著作権と商標権のいずれも侵害してしまうおそれがある。このため、2020年東京オリンピックのエンブレムに関する報道の中に著作権、商標権の両方の言葉が度々でてきているのである。

2016年06月01日

洋菓子店開業に向けて計画中で、店名を斬新なものにしようと考えています。このような店名は商標登録の対象になるのでしょうか。

 商標登録は商標そのものが漠然と権利化されるのではなく、その商標を使用する商品やサービスとの組み合わせで権利化されている。例えば洋菓子店の場合には、「菓子」を指定商品として商標登録される。
 ただし、「菓子」について同一または類似の他人の登録商標が存在する場合には、商標登録出願しても拒絶されるだけでなく、その店名を使用することが他人の商標権侵害になるおそれがある。従って、店名を決定する前に、同一または類似の他人の先願、先登録商標の存在を確かめるための調査が必要であり、その調査結果が出てから店名(商標)を決めるべきである。
 類似する商標とは称呼(呼び名)が似ている商標のことで、例えば、「ソニー」と「ソミー」は類似する商標であると考えられる。
 商標登録出願は指定商品との関係で判断される。すなわち、商標が同一または類似でも指定商品が異なれば重複して商標登録され得る。例えば、一方の商標権が「菓子」を指定商品としており、他方の商標権が「文房具」を指定商品としている場合は、商標が同一または類似でも抵触しない権利ということになる。

洋菓子店内に喫茶コーナーを併設して、洋菓子店で販売しているケーキと一緒にコーヒー、紅茶等の飲み物を提供しようと思っていますが、「菓子」について商標権を取得すれば足りるのでしょうか。

 喫茶店の業務は「飲食物の提供」であり、「菓子」とは指定する商品、役務が異なる。従って、洋菓子店内に喫茶コーナーを設ける場合には、「飲食物の提供」も指定して商標登録を受けた方が良いと思われる。
 商標登録出願は、商標法で定められた第1類から第45類までの商品及び役務の区分に従って商品、役務を指定して行う必要がある。第1類から第34類までが商品、第35類から第45類までが役務の区分である。「菓子」は第30類に属し、「飲食物の提供」は第43類に属している。
 商品は「菓子」の他、例えば、「化粧品」(第3類)、「文房具」(第16類)などと区分され、役務は「飲食物の提供」の他、「広告」(第35類)、「自動車による輸送」(第39類)などと区分されている。
 役務については解り難いところもあるので、説明しておく。例えば、「自動車による輸送」は顧客から預かった荷物を自動車によって静岡市から浜松市へ運んであげるという役務(サービス)を販売しているのであり、この役務に使用する商標が役務商標(サービスマーク)ということになる。クロネコヤマトの黒猫の図形がこの役務商標に該当する。
 質問に戻って喫茶店の業務である「飲食物の提供」は役務であり第43類に属しているので、第30類の商品「菓子」についてのみ商標権を取得するだけでは足りないと思われる。

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自社の洋菓子に加えて、おしゃれなコーヒーカップ等の食器類を他社から仕入れてインターネットを介して販売しようと考えていますが、上記の「菓子」、「飲食物の提供」について商標権を取得すれば足りるのでしょうか。

 他社から商品を仕入れて販売する場合に使用する商標については小売等役務を指定して商標権を取得する必要がある。この小売等役務とは、小売業や卸売業を行う者が商標登録出願において指定する役務のことで、コーヒーカップ等の食器類をインターネットを介して販売する場合には「ガラス製又は陶磁製の食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第35類)を指定することになると判断される。
 小売等役務については解り難いところもあるので、具体例を挙げて説明すると、スーパーマーケットに買い物に行ったときに、店内で使用する買い物かごを貸してくれるが、この買い物かごを貸してくれる行為が「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」ということになる。店内で使用する買い物かごは販売されているわけではないので商品ではなく、顧客が便利なように買い物かごを貸してくれているのである。すなわち、「顧客に対する便益の提供」なのだ。そして、この買い物かごに「イトーヨーカドー」と表示されていれば、「イトーヨーカドー」が小売等役務の商標ということになる。

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2016年11月01日

最近、キャッチフレーズが商標登録されやすくなったと聞きましたが、どういうことなのでしょうか。

平成28年4月1日に商標法の審査基準が45年ぶりに大幅に改訂されたことに伴いキャッチフレーズが登録されやすくなった。
 企業がプロモーション(商品の販売促進のための宣伝活動)を行う上で、キャッチフレーズは極めて重要なものであり、巷にはキャッチフレーズが溢れているといっても過言ではない。「元気ハツラツ」、「The Power of Dreams」、「がんばれ!ニッポン!」など、殆どの方が知っているのではないだろうか。

(1)キャッチフレーズの商標登録に関係が深いのは商標法第3条第1項第6号である。商標法第3条第1項第6号では、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は商標登録を受けることができない旨が規定されている。すなわち、自他商品識別標識として機能することができない商標は登録を受けることができないとされている。
(2)旧審査基準において、「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、商標法第3条第1項第6号に該当する」こととされていたが、この記載は今回の改訂によって削除された。すなわち、キャッチフレーズについて商標登録がされやすくなったということなのだ。
 新審査基準では、「出願商標(例えば、キャッチフレーズ)が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合」は、本号に該当して登録が認められず、「出願商標(例えば、キャッチフレーズ)が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等のみならず、造語等としても認識できる場合」には、本号には該当しないと判断される。
(3)なお、旧審査基準の下においても、キャッチフレーズについては商標登録が認められた例もある。前掲の「元気ハツラツ」(大塚製薬(株))、「The Power of Dreams」(本田技研工業(株))、「がんばれ! ニッポン!」(公益財団法人日本オリンピック委員会)などである。
(4)要するにキャッチフレーズは、旧審査基準の下においては自他商品識別力がないという取り扱いを原則としていたが、この原則を新審査基準では外すことにした。その結果としてキャッチフレーズについて商標登録が比較的容易に認められるようになったのである。
(5)商標法第3条第1項第6号についての審査基準改訂は、プロモーションにおいてキャッチフレーズの重要性が広く認識されているという時代を反映したもので、企業はキャッチフレーズを商標登録して自社が独占して使用できるようにし、自社商品の広告に利用することを検討すべきであると考える。

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