産業財産権Q&A

Q53

最近、キャッチフレーズが商標登録されやすくなったと聞きましたが、どういうことなのでしょうか。

A

 平成28年4月1日に商標法の審査基準が45年ぶりに大幅に改訂されたことに伴いキャッチフレーズが登録されやすくなった。
 企業がプロモーション(商品の販売促進のための宣伝活動)を行う上で、キャッチフレーズは極めて重要なものであり、巷にはキャッチフレーズが溢れているといっても過言ではない。「元気ハツラツ」、「The Power of Dreams」、「がんばれ!ニッポン!」など、殆どの方が知っているのではないだろうか。

(1)キャッチフレーズの商標登録に関係が深いのは商標法第3条第1項第6号である。商標法第3条第1項第6号では、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は商標登録を受けることができない旨が規定されている。すなわち、自他商品識別標識として機能することができない商標は登録を受けることができないとされている。

(2)旧審査基準において、「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、商標法第3条第1項第6号に該当する」こととされていたが、この記載は今回の改訂によって削除された。すなわち、キャッチフレーズについて商標登録がされやすくなったということなのだ。
 新審査基準では、「出願商標(例えば、キャッチフレーズ)が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合」は、本号に該当して登録が認められず、「出願商標(例えば、キャッチフレーズ)が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等のみならず、造語等としても認識できる場合」には、本号には該当しないと判断される。

(3)なお、旧審査基準の下においても、キャッチフレーズについては商標登録が認められた例もある。前掲の「元気ハツラツ」(大塚製薬(株))、「The Power of Dreams」(本田技研工業(株))、「がんばれ! ニッポン!」(公益財団法人日本オリンピック委員会)などである。

(4)要するにキャッチフレーズは、旧審査基準の下においては自他商品識別力がないという取り扱いを原則としていたが、この原則を新審査基準では外すことにした。その結果としてキャッチフレーズについて商標登録が比較的容易に認められるようになったのである。

(5)商標法第3条第1項第6号についての審査基準改訂は、プロモーションにおいてキャッチフレーズの重要性が広く認識されているという時代を反映したもので、企業はキャッチフレーズを商標登録して自社が独占して使用できるようにし、自社商品の広告に利用することを検討すべきであると考える。