産業財産権Q&A

Q32

当社は工作機械メーカーで、新製品の独自技術について日本国内で特許出願をしました。この新製品の工作機械を輸出することが決まり、輸出国を含めた複数の国に特許出願することを検討中です。外国出願するに当たり注意すべき点を教えてください。

A

外国特許出願を行う場合、大きく分けて2つのルートがある。パリ条約に基づく出願(以下、パリ出願という。)と特許協力条約に基づく出願(以下、PCT出願という。)だ。

 

(1)パリ出願

 

パリ出願

 

 

 170以上の国や地域が加盟する産業財産権に関する国際条約で、加盟国の国民はパリ条約に基づく権利を主張して加盟国へ出願することができる。この場合、 特許出願の内容を権利取得を求める国の言語に翻訳して、その翻訳文で出願する必要がある。従って、アメリカと中国に出願する場合には、英語と中国語の翻訳 文を用意しなければならないことになり、出願当初に比較的大きな費用が発生することになる。

 外国で特許権を取得するためには、外国の特許庁とのやり取りを行うことになるので、当該国の専門家を通して手続を行うことが必要である。

 

(2)PCT出願

 

PCT出願

 

 

 PCT出願は出願当初には日本語で出願できる点がパリ出願との大きな違いだ。PCT出願は、PCTで規定された受理官庁としての日本特許庁へ出願を行う。PCT出願は、すべてのPCT加盟国について出願したものとみなされることになる。この外国出願したものとみなされた状 態となっているPCT出願について最終的に特許権を取得する国を絞り込む手続を国内移行という。この国内移行は翻訳文等の必要書類を提出し、所定の費用を 支払って、権利取得を希望する国に移行させる手続である。この国内移行は出願日(PCT出願のもとになった日本出願があれば日本の出願日)から30ヶ月以 内に行う必要がある。

 PCT出願では上記の国内移行を行う前に国際予備審査報告を入手することができる。国際予備審査報告はPCTで規定された国際予備審査機関としての日本特 許庁が行うもので、特許性についての予備的な見解が記載されている。従って、出願人はこの国際予備審査報告の内容を勘案し、更に費用をかけて国内移行を行 うか否かを決めることができる。

 

 

 パリ出願、PCT出願のいずれを選択すべきであるかは、ケースバイケースなので、外国出願に詳しい専門家と相談して決定すべきである。
 また、パリ出願、PCT出願のいずれについても日本特許庁に対する日本特許出願から12ヶ月以内に行うべきである。「優先権」を主張することができるからだ。
 「優先権」とは、日本特許出願の日から12ヶ月以内に外国出願した場合、その外国出願の審査を日本の出願日を基準に行ってくれる国際条約上の利益のことで ある。各国の言語や法制の違いから日本と同時に外国へ出願することは殆ど不可能であることから採用されたものだ。殆どの国で早く出願した者勝ち(先願主 義)を採用するため、「優先権」を主張することは出願人にとって極めて重要なものとなる。