産業財産権Q&A

Q3

自社が取得した特許権を他社に有料で使わせることはできるのでしょうか?

A

 最近、ある自動車メーカーがシートベルトに関する特許をライバルメーカーに使わせるというニュースがあった。このように特許権については、他人に実施権を許諾することができる。実施権には「専用実施権」と「通常実施権」がある。

(1)専用実施権とは、一定の範囲内で、その特許発明を業として独占的に実施することができる権利である。「独占的に」であるから、専 用実施権を設定した範囲においては、特許権者であっても勝手に実施すれば専用実施権の侵害になり、その特許権者は差止めや損害賠償を請求されることにな る。

(2)通常実施権とは、一定の範囲内で、その特許発明を業として実施することができる権利である。通常実施権は単に(独占的にではなく)特許発明を実施することができるものであるから、特許権者が通常実施権を設定した範囲において、特許発明を実施しても通常実施権の侵害にはならない。

(3)実施権の範囲は、期間的、地域的、内容的な面で限定することができる。
期間的限定とは例えば3年間というように期間を限ることをいい、地域的限定とは例えば静岡県というように地域を限ることをいい、内容的限定とは例えば自動車 にもオートバイにも使用できる発明について自動車だけに限ることをいう。

(4)実施権を設定するには、まず設定契約を行う。この設定契約を行うには、通常契約書を交わすことになる。専用実施権は特許庁に届出をして特許原簿に登録されることが、その効力発生の条件となる。通常実施権は特許庁に届出をしなくても、契約だけで効力が発生する。