産業財産権Q&A

Q62

工夫を凝らした玩具について法的保護を図りたいと思っていますが、どのような方法があるでしょうか。

A

(1)特許出願または実用新案登録出願を検討すべきである。

 特許、実用新案登録はいずれも技術的アイデアを保護対象としており、玩具に技術的な工夫がある場合は特許出願または実用新案登録出願の対象になり得るかを検討するべきである。
 特許は技術的アイデア全般が対象となり、実用新案登録は物品の形状、構造又は組合せに係るものが対象となる。従って、玩具は特許、実用新案登録のいずれかの対象になり得ると判断される。

 特許出願については、出願の全てが審査されるのではなく、出願審査請求が為されたものだけが審査される。そして、出願対象の発明が新規性を有するか(客観的に新しいかどうか)、進歩性を有するか(その道の通常の専門家(当業者)が、出願時の技術水準から容易に考え出すことができない程度のものかどうか)等の実体審査が行われて、この実体審査にパスすることを条件に特許権が付与されることになる。
 実用新案登録出願については、出願審査請求はなく、簡単に言えば出願書類が形式的に整っていれば、実体審査を行うことなく実用新案権が付与されることになる。極端なことを言えば、他人が全く同じ内容の実用新案権を取得していても、それとは無関係に実用新案権が付与されることになる。すなわち、同じ内容の実用新案権が併存することもあり得るということだ。

 特許権は、権利を侵害する者に対して損害賠償請求権、差止請求権等の権利行使をすることができる。
 実用新案権は、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、権利を行使できないことになっている。実用新案技術評価書とは、特許庁による考案内容に対する評価を示したものであり、実用新案技術評価書には新規性、進歩性等に関する判断結果が記載されている。この判断結果が実用新案権者にとって有利なものでなければ、実際には権利行使は難しいことになる。前述のように実体審査を行うことなく実用新案登録されるため、権利行使に条件を設けているのだ。実用新案技術評価書は実用新案権者等による技術評価請求を受けて、審査官が作成する。

 特許権の存続期間は出願日から20年であり、実用新案権の存続期間は出願日から10年である。

 

(2)意匠登録出願も検討すべきである。

 玩具が意匠登録出願の対象になるか否かを検討する必要がある。
 意匠登録は、物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるものを保護の対象とする。
 玩具に斬新なデザインが施されている場合は、意匠登録の対象になる可能性があるので、意匠登録出願を検討するべきである。また、玩具の一部に斬新なデザインが施されている場合には、物品の一部について意匠登録を求める部分意匠の出願を検討すべきである。部分意匠の対象となる箇所が一ヶ所であるとは限らないので、注意が必要である。

 意匠権の存続期間は登録から20年である。

 

(3)玩具に個性的な名称(文字商標)を付してそれを商標登録することで保護を図り、更に登録商標を顧客に覚えてもらい、売上を伸ばす作戦も検討すべきである。

 例えば、バンダイの「たまごっち\TAMAGOTCHI」は登録商標であり、これを正当な権限のない他人が玩具に使用すると商標権侵害になる。商標権を侵害する者に対しては、特許権等と同様に損害賠償請求権、差止請求権等の権利行使をすることができる。

 なお、商標は名称(文字商標)に限らず、キャラクター(図形商標)を制作して、これを商標登録することも検討すべきである。

 商標権の存続期間は登録から10年であり、10年ごとに更新することが可能である。従って、半永久的な権利と捉えることができる。玩具はBtoCの商品であることから、商標権による保護が有効に機能することが少なくない。

 

知って得する 特許・商標の知識 vol.36 (平成30年10月)