産業財産権Q&A

Q12

プリンターメーカーがプリンターのインクカートリッジのリサイクル品輸入業者を相手に特許権侵害訴訟をおこして、その訴訟に勝ったという新聞記事を読んだのですが、リサイクル品に特許権の効力がどうして及ぶのですか?

A

 リサイクル品にも特許権の効力が及び、侵害とされることがある。
まず、前提となる特許権侵害とは、正当な権限のない者が特許発明を業として実施することである。

(1)正当な権限のない者であるから、特許権者から実施許諾を受けた者(実施権者)は特許発明を実施しても特許権侵害とはならない。

(2)「特許発明」とは、文字通り特許された発明で、まだ特許が付与されていない出願中のものは
特許発明ではない。また、「特許発明」は出願中書類中の特許請求の範囲に記載された発明である。

(3)「業として」とは広く「事業として」の意味で、営利目的に限るものでない。従って、国営事業としてのダム建設にブルドーザーを使 用することは「業として」に該当する。また、個人的、家庭的目的で生産、使用等するものは「業として」ではない。従って、家庭でDVDプレーヤーを個人的 に使用することは「業として」ではない。

(4)特許発明の実施とは、例えば特許製品を生産(製造)、譲渡、使用、貸渡し等する行為をいう。特許権の効力はこれら生産(製造)、 譲渡等のそれぞれの行為に及ぶ。従って、正当な権限のない者が、特許製品であるプリンターのインクカートリッジを製造する行為、そのプリンターのインク カートリッジを販売(有償で譲渡)する行為のそれぞれが特許権を構成することになる。これを「実施行為独立の原則」という。

(5)空になったインクカートリッジにインクを再充填してリサイクルする行為が、特許権の侵害になるかどうかは簡単に判断することはで きないが、今回の判決ではリサイクル業者のリサイクル行為が、特許部分の上記(4)の(新たな)生産に当たり特許権の侵害になると判断している。

(6)近年においては省資源、環境保全の観点からリサイクルの重要性はますます高まっているが、それを理由に特許権侵害を正当化するこ とはできない。知的財産権をないがしろにすれば、安易な模倣、盗用を認めることになり、莫大な資金と労力をかけて新製品を開発する企業が激減して、わが国 の技術レベルが低下し、ひいては国力が衰えてしまうからである。