産業財産権Q&A

Q46

他社が開放している特許権を利用して自社製品を製造しようと考えていますが、その場合の注意点を教えてください。

A

(1)他人の特許権を利用するためには自社が合法的に特許発明を実施することができるようにする必要がある。すなわち、特許権者に実施権を許諾してもらうか、特許権を譲渡してもらうかである。

(2)実施権の許諾について説明する。実施権とは特許権者から契約で定めた範囲で特許発明の実施が認められた権利で、専用実施権と通常実施権がある。

 ①専用実施権は設定された範囲においては専用実施権者が特許発明の実施を独占的に行うことができる権利であり、この範囲では特許権者といえども特許発明の実施が制限されることになる。例えば、契約日から3年間、静岡県内において、特許製品を製造・販売することを内容として専用実施権を設定した場合、この範囲においては特許権者といえども特許発明の実施が制限されることになる。

 ②通常実施権は専用実施権と異なり、特許権者の特許発明の実施が制限されない。従って、通常実施権を設定した範囲でも、特許権者が特許発明を実施することが可能である。

(3)特許権は有償、無償を問わず譲渡することが可能である。ただし、特許権の譲渡は特許原簿に登録されることが効力発生要件となるので、特許庁に対する手続が必要である。この手続には譲渡証などを添付する。

(4)注意点

 ①上記実施権の許諾、特許権の譲渡に先だって、製造しようとしている製品が当該特許権の権利範囲に入っているかを検討、確認する必要がある。そもそも特許権の範囲外であれば譲渡も実施権の許諾も必要ないからである。これは専門家に相談する必要がある。

 ②特許製品を自社の技術で製造できるのか等、ビジネスとして成り立つか否かを検討する必要がある。
 例えば、中小企業が大企業の特許権について譲渡等を受けても、ノウハウが無くては製造できない製品では本末転倒である。製造できたとしても数が少ない場合などコストが高くついて買い手がないこともある。また、製品を造っても販売ルートが無くてはビジネスにならないので、自社で販売可能な製品であるか否かについてもよく考える必要がある。
 当たり前のことであるが特許権を譲渡してもらっただけで利益が上がるわけではないので、専門家に相談しながらビジネスとして成り立ち得るかを事前によく検討すべきだ。