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産業財産権Q&A

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産業財産権に関する質問日本で特許出願をしたのですが、この出願と同じ内容のものを外国出願をするときに注意することはありますか?

産業財産権に関する質問に対する答え 日本の出願から1年以内に外国へ出願すべきである。この期間内であればパリ条約に規定された「優先権」を主張して外国へ出願することができる。

「優先権」とは、外国出願について日本出願の日に出願したものと同様の効果を与えるパリ条約上の特別の権利をいう。優先権は日本の出願日から12ヶ月(意匠、商標は6ヶ月)以内に外国出願した場合に認められ、この優先権を認めてもらえる期間を優先期間という。優先期間を過ぎてしまうと優先権を主張することができず、外国出願をした現実の出願日を基準に審査が行われることになる。従って、権利取得上、不利になるので、日本の出願から1年以内に外国へ出願すべきである。

パリ条約は産業財産に関する国際条約で、約160の国が加盟している。このパリ条約には、「優先権」の他、「内国民待遇」、「特許独立の原則」が規定されている。

「内国民待遇」とは、内国民(その国の国民)と同盟国の国民(外国人)とを特許の取得等に関し同一に扱わなければならいことをいう。従って、外国人の出願にだけ厳しい基準で審査することは許されない。
「特許独立の原則」とは、同盟国の国民の特許出願、特許権は他の国における特許出願、特許権と独立しており、他の国の動向に左右されることなく国ごと独立して成立、消滅することをいう。従って、日本で特許を取得できたからといって、アメリカで特許が取得できるとは限らないことになる。

産業財産権に関する質問商標にはローマ字を使うことはできるのですか。また「商号」と「商標」との違いはどのようなものですか?

産業財産権に関する質問に対する答え 商標にはローマ字は勿論、漢字、ひらがな、カタカナ、記号等を使用できる。 「商号」と「商標」との違いを次の表に示す。

  商号 商標
保護法 商法 商標法
定義 商人(会社)が自己を表すための名称 商品、役務(サービス)の識別標識
構成要素 文字(漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字) 文字(漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字、記号等)、図形
保護期間 無期限 登録から10年但し、更新できる
効力範囲 同一市町村、特別区、政令指定都市の各区 日本全国
具体例 ソニー株式会社
ヤマト運輸株式会社
SONY
ヤマト運輸の「黒猫の図形」

産業財産権に関する質問自社が取得した特許権を他社に有料で使わせることはできるのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え 最近、ある自動車メーカーがシートベルトに関する特許をライバルメーカーに使わせるというニュースがあった。このように特許権については、他人に実施権を許諾することができる。実施権には「専用実施権」と「通常実施権」がある。

(1)専用実施権とは、一定の範囲内で、その特許発明を業として独占的に実施することができる権利である。「独占的に」であるから、専用実施権を設定した範囲においては、特許権者であっても勝手に実施すれば専用実施権の侵害になり、その特許権者は差止めや損害賠償を請求されることになる。

(2)通常実施権とは、一定の範囲内で、その特許発明を業として実施することができる権利である。通常実施権は単に(独占的にではなく)特許発明を実施することができるものであるから、特許権者が通常実施権を設定した範囲において、特許発明を実施しても通常実施権の侵害にはならない。

(3)実施権の範囲は、期間的、地域的、内容的な面で限定することができる。
期間的限定とは例えば3年間というように期間を限ることをいい、地域的限定とは例えば静岡県というように地域を限ることをいい、内容的限定とは例えば自動車 にもオートバイにも使用できる発明について自動車だけに限ることをいう。

(4)実施権を設定するには、まず設定契約を行う。この設定契約を行うには、通常契約書を交わすことになる。専用実施権は特許庁に届出をして特許原簿に登録されることが、その効力発生の条件となる。通常実施権は特許庁に届出をしなくても、契約だけで効力が発生する。

産業財産権に関する質問『東京特許許可局』は本当にあるのですか?

産業財産権に関する質問に対する答え『東京特許許可局』は存在したことはない。早口言葉のためにつくられた幻の官庁である。産業財産権を取得するためには、東京の霞ヶ関にある『特許庁』に出願書類を提出しなくてはならない。

産業財産権に関する質問商品に表示されているPAT.Pや®はどのような意味があるのですか?

産業財産権に関する質問に対する答えPAT.Pは特許出願中を意味する。またPATとあったら、特許権が既に発生しているという意味である。®は登録商標を意味し、商品だけでなく、テレビコマーシャルでも商標と一緒に®が記載されているので注意してみるとよいだろう。特許権や商標権等がないにもかかわらず、特許等があるような表示をすると、懲役や罰金の対象になることもあるので注意が必要だ。

産業財産権に関する質問実用新案登録出願と特許出願のどちらを選んだらよいのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え商品のライフサイクルが短く、早期に権利化したい場合には実用新案登録出願を選択すべきである。但し、対象によっては実用新案登録が認められないものがあるので注意が必要だ。例えば、「食品の製造方法」のような「方法」は登録が認められない。また「化学物質」のような「物質そのもの」も登録が認められない。これらは特許出願する必要がある。実用新案登録出願のメリットは、実態的な審査をしないで早期に権利が発生することである。デメリットは、権利期間が出願日から10年と短く、また実態審査がされないので、本来登録されるべきでないものまで登録される危険性が高いことである。このため、実用新案権を行使するに先だって特許庁作成の技術評価請求書を侵害者に提示して警告する必要がある。技術評価書は請求の範囲に記載された考案の有効性についての見解を示すものである。

産業財産権に関する質問自社の製品が特許権を侵害しているという警告書が同業他社から送られてきました。どうすればよいでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え他社の特許権が必ずしも有効とは限らないので、「特許原簿」を入手して特許権が消滅していないか、権利者は誰か等をチェックする必要がある。次に「特許公報」の【特許請求の範囲】を調べて、自社製品が特許権をほんとうに侵害するものなのかを検討する。特許権を侵害しているか否かは専門的にも難解な場合が少なくないので、弁理士に相談するのが賢明である。警告書に対しては、自社の考えを相手に知らせる回答書を出すのが賢明だ。回答書は後に内容を証明することができる内容証明郵便で出すほうがよいだろう。警告書の内容にもよるが、回答書には当社の製品が特許権に触れている根拠を教えて欲しいとか、当社の製品を検討したが特許権に触れていないと確信している旨、或いは製造中止をする旨等を記載する。さらに円満解決を希望するとか、話し合いをもつ準備がある等と記載することもある。自社製品が特許に触れる場合は、特許調査を行い、その特許出願前に公知の事実、文献がないかを念のため調べることも必要だ。特許無効審判を請求する場合の資料とするためである。また出願より前に自社が事業の準備をしていたか否かを調べる。先使用権が認められる場合もあるからだ。

産業財産権に関する質問ビジネスモデル特許とはどのようなものをいうのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答えビジネスモデル特許とは、新規なビジネスの手法をコンピュータシステムやネットワーク等の技術的手段を使用して具現した発明を特許の対象とするものである。ビジネスモデル特許は、「電子商取引」、「金融ビジネス(銀行、保険、証券)」関連のものが中心である。その他、「電子マネー 電子決済等」もビジネスモデル特許に含めることができ、「広告 財務 在庫管理」に関連した特許もビジネスモデル特許に含まれることがある。具体例としては、「自動車等の競売システム」の特許(第2733553号 特許権者:日本オートオークション(株))がある。この特許は中古車等の競売にコンピュータネットワークを利用してリアルタイムで買い手と売り手の双方が参加できる競売システムである。その他、具体例としては「広告情報の供給方法およびその登録方法」の特許(第2756483号 特許権者:凸版印刷(株))などがある。なお、平成13年1月10日の出願分から、媒体に記録されていないソフトウエア自体を「物の発明」として特許の対象とする特許庁の審査基準が発表された。

産業財産権に関する質問商号を商標登録できるのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え自社の商品(サービス業の場合はサービス)と、他社の商品(サービス)とを区別する目印として機能するものであれば商標登録をすることが可能である。商号は「株式会社」のように商人が自己を表すために用いる名称で、商法上登記されることにより同一市町村において同一営業について権利が発生する。しかし実際のビジネスでは、商号がその商人の提供する商品(サービス)を間接的に示し、商品(サービス)を区別する目印である商標と同じような役割を果たすことがある。商号と商標を一致させるとブランドだけではなく企業イメージの向上にも役立つ。ソニー株式会社による登録商標「SONY(ソニー)」の使用は、その好例である。

産業財産権に関する質問旧法によって登録された商標の指定商品の書換登録申請が開始されたと聞きましたが、その内容はどのようなものなのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え現在、商標区分は明治21年法同42年法大正10年法昭和34年法平成3年法の国際分類に基づく区分まで5種類のものが併存しているため、検索、調査等の面で極めて煩雑である。さらに、明治、大正期の商品区分の権利範囲が不明確である等の問題が指摘されている。そこで、平成4年3月31日までに出願された商標登録出願について、旧区分に従って登録された指定商品から現行区分(平成3年法による国際分類)に書き換える「指定商品の書換)を行うことにした。書換をせずに更新登録を行った場合には、次回(10年後)の更新登録ができないので、今後も長期間使用する商標については必ず書換が必要である。書換申請は、商標権の満了日の前6ヶ月から満了日の後1年の間にしなくてはならない。書換が必要な商標権者には、特許庁から「書換登録申請時期のお知らせ」のハガキが郵送されることになっている。

産業財産権に関する質問他人の意匠(デザイン)でも別の製品(物品)についてであれば意匠登録できるのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え製品(物品)が違っても意匠登録はできない。意匠登録の条件として創作性が要求される。すなわち従来のデザインから容易に創作できる程度のもの(創作性が低いもの)は、意匠登録を受けることができない。例えば、「自動車」と「自動車の玩具」は、用途も機能も異なるため別々の物品である。意匠法では意匠と物品とは一体のものであるという考え方をする。従って、デザインが同じでも物品が異なれば、意匠は別々のものとなり、その意匠は新しいということになる。しかし、新しい意匠でも創作性が低いものについては意匠登録は認められない。従って、「自動車」のデザインを「自動車の玩具」にデザイン上殆ど手を加えないで転用した場合には、「自動車の玩具」について意匠登録を受けることができないと考えられる。

産業財産権に関する質問プリンターメーカーがプリンターのインクカートリッジのリサイクル品輸入業者を相手に特許権侵害訴訟をおこして、その訴訟に勝ったという新聞記事を読んだのですが、リサイクル品に特許権の効力がどうして及ぶのですか?

産業財産権に関する質問に対する答え リサイクル品にも特許権の効力が及び、侵害とされることがある。
 まず、前提となる特許権侵害とは、正当な権限のない者が特許発明を業として実施することである。
 (1)正当な権限のない者であるから、特許権者から実施許諾を受けた者(実施権者)は特許発明を実施しても特許権侵害とはならない。

(2)「特許発明」とは、文字通り特許された発明で、まだ特許が付与されていない出願中のものは
特許発明ではない。また、「特許発明」は出願中書類中の特許請求の範囲に記載された発明である。

(3)「業として」とは広く「事業として」の意味で、営利目的に限るものでない。従って、国営事業としてのダム建設にブルドーザーを使用することは「業として」に該当する。また、個人的、家庭的目的で生産、使用等するものは「業として」ではない。従って、家庭でDVDプレーヤーを個人的に使用することは「業として」ではない。

(4)特許発明の実施とは、例えば特許製品を生産(製造)、譲渡、使用、貸渡し等する行為をいう。特許権の効力はこれら生産(製造)、譲渡等のそれぞれの行為に及ぶ。従って、正当な権限のない者が、特許製品であるプリンターのインクカートリッジを製造する行為、そのプリンターのインクカートリッジを販売(有償で譲渡)する行為のそれぞれが特許権を構成することになる。これを「実施行為独立の原則」という。

(5)空になったインクカートリッジにインクを再充填してリサイクルする行為が、特許権の侵害になるかどうかは簡単に判断することはできないが、今回の判決ではリサイクル業者のリサイクル行為が、特許部分の上記(4)の(新たな)生産に当たり特許権の侵害になると判断している。

(6)近年においては省資源、環境保全の観点からリサイクルの重要性はますます高まっているが、それを理由に特許権侵害を正当化することはできない。知的財産権をないがしろにすれば、安易な模倣、盗用を認めることになり、莫大な資金と労力をかけて新製品を開発する企業が激減して、わが国の技術レベルが低下し、ひいては国力が衰えてしまうからである。

産業財産権に関する質問部分意匠という言葉を聞いたのですが、意匠が物品の一部分でも登録が認められるのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え部分意匠は平成10年から採用されている制度で、物品の一部分について意匠登録を認めるというものだ。意匠登録出願は物品のデザインを保護するためのもので、原則として物品全体の六面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図)の提出が必要である。特許庁では提出された図面等をもとに過去において同じようなデザインが公知になっていないか、先願で同じようなデザインのものがないか等を審査して意匠権を与えている。そして、登録意匠と同一または類似する意匠を他人が実施した場合は意匠権の侵害となる。

ところが、登録意匠の一部分だけを模倣した(一部分だけが似た)物品を製造、販売した場合に意匠全体としては非類似になってしまうことがある。

これでは意匠権者を十分に保護できないことから、部分意匠登録制度が採用された。部分意匠の例としては、ダルマの置物で顔のデザインだけについて意匠登録されたもの、カメラの意匠で鏡筒やレンズのデザインだけについて意匠登録されたもの等がある。
部分意匠の出願をする場合には、部分意匠として登録を求める部分が分かるように、例えば登録を求める部分を実線で、他の部分を破線で表した図面の提出が必要である。

産業財産権に関する質問小売等役務商標の出願の受付が開始されたと聞きましたが、その内容を教えてください。

産業財産権に関する質問に対する答え小売等役務商標だけを説明しても解り難いので、まず商標登録制度について概説する。
(1)商標は、「ABCストア」等の文字だけでなく、キャラクター等の図形なども含まれる。商標について独占使用を希望する商品(役務)を指定して特許庁に商標登録出願する。独占使用を希望する商品(役務)のことを指定商品(役務)といい、商品または役務の区分に従って出願書類に記載することになっている。言い換えれば商標登録出願は漠然と商標(マーク)の登録を求めるものではなく、使用を欲する商品(役務)を指定して、その範囲において登録を求める仕組みになっている。
  商品または役務の区分は1類から45類まであり、1類から34類までが商品の区分で、35類から45類までが役務の区分である。商品の区分は「菓子及びパン」(30類)のように商品(品物)を対象としている。また役務の区分は「車両による輸送」(39類)のように役務(行為)を対象としている。なお、商品または役務の区分は特許庁のホームページに掲載されている。

 (2)今回の改正では、役務の区分の一つである35類に「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等が加わった。
これによって、小売業者、卸売業者(以下、小売業者等という。)が顧客に対して行うサービスに使用する商標の登録が可能になった。
小売業者等には、デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター、八百屋、魚屋、肉屋、眼鏡店等、あらゆる小売業者等が含まれる。また、カタログ、インターネット等を利用した通信販売も含まれる。
「顧客に対する便益の提供」とは、例えばデパートの店舗における品揃え、商品説明、陳列が挙げられる。通信販売会社では顧客が商品を選びやすいように、商品のレイアウトを工夫したカタログの提供、インターネットを利用した通信販売では、顧客が商品を選びやすいようなサイトの提供が挙げられる。

(3)商標は、小売業者等が店舗の看板、店員の制服、レジ袋、包装紙、商品の値札、価格表、レシート、買い物かご等に表示するもの、更に店舗内の売場の名称等が該当する。

(4) 多くの小売等役務商標の出願が4月1日に集中する混乱を避けるため、平成19年4月1日から6月30日までの間に出願された小売等役務商標の出願は、同日に出願されたものとして取り扱われる。但し、同日に出願されたものとして取り扱われるのは小売等役務を指定した範囲どうしだけであり、自己の出願の小売等役務を指定した範囲と、他人の出願の商品を指定した範囲との間では、先願主義(早く出願した者勝ち)が適用される。
小売等役務商標の出願は必ず登録されるものではなく、他の商標登録出願と同様に特許庁における審査にパスすることが登録の条件となる。

(5) 商標登録が認められた場合は、登録商標を登録された商品(役務)の範囲で自由に使用でき、またその類似範囲で他人の使用を排除することができる。即ち、商標権は独占排他権として機能することになる。

産業財産権に関する質問当社が従来から使用している小売等役務商標が他人によって登録された場合は、その商標の使用ができなくなってしまうのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え平成19年4月1日より前から使用してきた商標であれば、継続して使用すること(継続的使用権)が認められる。ただし、平成19年4月1日より前から使用してきた事実の証明を求められる場合がある。
 また、商標の使用を継続して認められる場合でも、商標権者から需要者の混同を避けるための表示(地名等)を求められることがある。この場合には当事者どうしで話し合うことになっている。

産業財産権に関する質問既に商品商標の商標権を取得している場合でも、小売業者等は小売等役務商標の商標権を取得する必要があるのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え商品商標の商標権と小売等役務商標の商標権の両方を取得しなければならないことはない。ただし、小売等役務商標の商標権を取得すればより手厚い保護を受けることができる。商標の継続的使用権で足りるとするのか、小売等役務商標の商標権を取得するのかは各人(各社)で判断する事柄である。

産業財産権に関する質問意匠法の改正もされたそうですが、その内容について教えてください。

産業財産権に関する質問に対する答え意匠権の存続期間が設定登録の日から20年になった。諸外国の法制(欧州意匠法最長25年)に合わせた等の理由から改正されたものである。平成19年4月1日以降の出願が対象になる。なお、法改正前における存続期間は設定登録の日から15年である。

産業財産権に関する質問長期に渡って使用してきた自社の商品名がありますが、この商品名について、新規の取引先から商標登録をしているのか、という質問を受けました。どういうことなのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え商品名は商標として捉えられ、他人の登録商標を無断で使用すると商標権の侵害になり、損害賠償請求等を受けることがある。これを取引先が心配したのだと思われる。
  他人の商標権を侵害していることを知らないで、長期に渡って商標を使用していることもあるので、まずは他人の商標権を侵害していないか否か、出願した場合に商標登録を受けられそうであるか否かの調査を行うべきである。
  他人の商標権を侵害しているという調査結果であれば、商標の使用を止めて、新たな商標を考えることが賢明である。
登録の可能性があるとの調査結果であれば商標登録出願を行う。そして、特許庁における審査にパスし、且つ登録料を納付すれば商標権を取得することができる。
商標登録出願は、商標と、この商標を使用する商品(役務)とを願書に記載して行う必要がある。例えば「ABC」という商標と、「菓子」という商品とを願書に記載する。
商品(役務)の記載は特許庁で決められた区分に従って行う。この区分は45あり、1類〜34類には商品が列挙され、35類〜45類には役務、例えば銀行の「預金の受入れ」、ホテルの「宿泊施設の提供」が列挙されている。

産業財産権に関する質問商標登録出願が特許庁の審査にパスするためには、どのような要件を満たすことが必要なのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え(1)普通名称、記述的商標などでないこと。
  商標は自己の商品(役務)と他人の商品(役務)とを区別するための標識であることから、このような区別に役立たない普通名称等は登録が拒絶されることになっている。
  例えば、商品「鉛筆」について商標「鉛筆」は普通名称なので拒絶されることになる。普通名称であるか否かは指定した商品(役務)との関係で判断され、指定役務が「航空機による輸送」である場合、「空輸」は普通名称とされる。
また商品の産地、品質、原材料、効能、数量等を示す記述的商標も拒絶されることになる。「スーパー」、「1ダース」、「静岡」等は記述的商標に該当する。
  その他、商品「清酒」についての「正宗」のような慣用商標、「伊藤」のようなありふれた氏、単なる「○」のような極めて簡単でありふれた商標等は、拒絶されることになる。

(2)他人の登録商標と抵触する関係にないこと。
抵触する関係とは、すでに登録されている商標と?@商標同一・商品同一、?A商標類似・商品同一、?B商標類似・商品類似の3つの関係をいう。
商標の類似には、「ソニー」と「ソミー」のように呼び名が似ている「称呼類似」、「王様」と「キング」のように意味が似ている(同じ)「観念類似」、下図に示すマークのように見た目が似ている「外観類似」がある。
商品の類似とは、「クッキー」と「チョコレート」のように同種の商品となる関係のことである。
商標権を取得できれば、商標権者は指定商品(指定役務)について登録商標を独占的に使用でき、類似範囲において他人が勝手に使用するのを排除することができる。
参考文献 商標 第3版(網野 誠 著 株式会社有斐閣発行)

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産業財産権に関する質問当社の特許権を侵害していると思われるライバルメーカーの印刷装置がありますが、どのようにしたらよいでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答えライバルメーカーに対し警告書を出すのが一般的だが、その前に確認、準備しておくべきことがある。
(1)当社の特許権は存在しているか。当社の特許権が年金不納等によって消滅していないかを確認することが必要である。この確認は特許庁から特許原簿を取り寄せて行う。

(2)特許発明の内容を確認する。特許発明とは特許請求の範囲に記載された発明のことで、特許庁の審査の過程で補正されたり、特許後においても訂正されたりして、特許出願時の内容がそのまま特許されるとは限らない。従って、現在の特許発明の内容、即ち現在の特許権の範囲を確認する。

(3)ライバルメーカーの印刷装置が特許権を侵害するものであるかを検証する。実物をしっかり確認して特許権を侵害するものであるかを調べると共に写真、ビデオ、カタログ等、可能な限りの資料を収集しておくことが重要だ。相手から侵害ではない旨の反論をされた場合に印刷装置を再確認できるようにしておくためである。
特許権侵害であるか否かの判断は容易ではないことが少なくないので、専門家に鑑定を求めることが望ましい。
十分な検証を行った上でライバルメーカーの印刷装置が特許権侵害であると判断された場合には警告書を出す。警告書は配達日や内容を証明できる内容証明郵便にするのが賢明である。警告書には、特許番号、侵害であると判断される印刷装置を特定するための製品名や品番、特許権侵害であるとする主張、実施権許諾の準備の有無等の必要事項を記載する。

産業財産権に関する質問当社で新製品の開発を計画し、同業他社の同種の製品を調べたところ、他社製品に「特許876○○○○」という記載はあります。どうしたらよいでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え (1)製品に記載された番号から特許が本当に存在しているかを調べ、特許が存在している場合には、その特許の内容を調査する。 まずは特許庁のホームページから特許電子図書館にアクセスして、特許番号から年金(権利を維持するための特許印紙)の納付状況等をチェックして、その番号の特許権が存続しているかどうかを調べる。特許権が存続していることを確認できたら、特許権者はだれか、存続期間は後何年残っているか等を調べる。 特許権が存在しているか否か、権利者がだれか等を確実に調査するためには、特許庁から特許原簿を取り寄せる必要がある。

(2) 特許公報を入手して、特許発明の内容を検討する。特許発明とは特許請求の範囲に記載された発明のことで、この特許発明と開発予定の製品とを比較する。その結果、当該製品が特許発明に抵触して、特許権侵害に該当する場合には、製品を設計変更し特許権を侵害しないものとする必要がある。また、設計変更では特許権侵害を回避できない場合には新製品の開発を見直すことも検討するべきだ。 特許権侵害が明らかであっても、新製品の販売をどうしても行いたい場合には、特許無効審判の請求を検討するべきである。

(3)同業他社が所有している権利は製品に付された番号のものだけであるとは限らないので、他の特許権、実用新案権及び意匠権も調査した方がよい

産業財産権に関する質問特許無効審判とはどのような手続なのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え(1) 特許無効審判とは、特許に関して無効理由があることを示す証拠を特許庁に提出して、その特許を無効にすることを求める手続である。特許権侵害であるとして警告を受けたり、侵害訴訟を起こされたりした場合の対抗策として特許無効審判を請求することが多い。 特許庁の審査にパスした権利を無効にするためには、相当な資料を収集する必要があり、国内外を問わず膨大な調査が必要となる。特許出願より前にその資料が存在していたことを証明しなくてはならないので、第一に公開された日が明らかな特許庁発行の公報を対象に調査するが、それ以外の資料、例えば技術論文、書籍、カタログ、業界紙等に調査範囲を広げることも少なくない。このように広く無効資料の調査を行っても、有効な資料を発見できないこともある。

(2) 特許を無効にすることができそうな資料を入手できたら、特許無効審判を特許庁に請求する。特許無効審判は請求人(特許無効審判を請求した者)と被請求人(特許権者)とが対立する、当事者対立構造をとり3人または5人の審判官が合議体で判断する。審判の下級審である審査では審査官が一人で審査するのに対し、一旦登録された特許を無効にする判断を行うため、合議体によってより慎重且つ厳正に審理が行われる。

(3) 特許無効審判は請求人が提出する審判請求書、被請求人が提出する答弁書等の書面によってやり取りを行う書面審理が採用されることもあるが、審判の請求人、被請求人及び審判官が一同に会して話し合いをする口頭審理が開かれる場合もある。実際の口頭審理は審判の請求人、請求人の代理人弁理士、被請求人、被請求人の代理人弁理士、審判官及び特許庁の書記官が出席して行われる。口頭審理は書面審理に比べて論点を迅速に整理できる等の利点があるが、関係者が同時に特許庁へ集まらなくてはならない大変さもある。そこで、最近では審判官、書記官が地方都市に出張して口頭審理を行う巡回審判が行われている。

(4) 特許無効審判において審理が尽くされると審決が出される。審決には特許を無効にする審決(認容審決)と特許を維持する審決(棄却審決)とがある。なお、請求項が複数(例えば合計3項)ある場合は、そのうちの一部(例えば請求項3)のみが無効になることもある。
審決に不服がある場合は、知的財産高等裁判所に訴えを起こして争うことができる。

産業財産権に関する質問日本で商標登録を受け、日本国内でのみ販売してきた商品を輸出しようと思います。日本で商標登録を受けていれば、その登録商標をそのまま輸出した国において使用しても大丈夫なのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え日本の商標権の効力は日本国内にしか及ばないので、日本で商標登録を受けていても、外国で商標を付した商品を販売等すると、その外国で他人の商標権を侵害してしまうおそれもある。従って、日本において商標登録されていても、その登録商標を外国でそのまま使用してもよいことにはならない。よって、輸出する国において商標登録を受けることが望ましい。
更に、商標登録出願は原則として各国ごとに行われ、その審査の基準も各国ごとに異なる。国によっては日本語の商標を「文字」としてではなく「図形」のように扱われることもあり、現地の言葉に翻訳した商標を出願した方がよい場合がある。また出願の際に指定する商品の概念は国ごとに異なり、その商品の指定の仕方も異なるので、実際に輸出する商品と権利を取得する商品とが異なってしまうことがないように注意が必要だ。
また、国によってはその国で商標を実際に使用していないと商標登録を認めない国があり、また一旦登録が認められても一定の期間内にその国おける登録商標の使用を証明しないと商標登録が取り消されることもある。このように自国における商標の使用を強く求める考え方を使用主義といい、この使用主義をとる国としてはアメリカ、カナダ等がある。
自国における使用を求めないで登録する考え方を登録主義という。ただし、各国の商標法は完全な使用主義または完全な登録主義を採用しているということはなく、使用主義と登録主義とをミックスしてバランスをとったかたちで構成されている。

産業財産権に関する質問特許権者が第三者に特許発明の実施を許諾する実施権についての特許法等の改正がされると聞きましたが、どのような内容なのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え(1)まず、実施権について説明する。実施権には専用実施権と通常実施権があり、法人、個人のいずれもが専用実施権者や通常実施権者になることができる。 専用実施権は、特許権者が第三者に特許発明の実施を許諾することによって生じる独占排他的実施権である。 通常実施権は専用実施権のような独占排他性はなく、特許法等の規定に定められた条件を満たすことによって生じる「法定実施権」、特許庁長官等の裁定によって生じる「裁定実施権」、および特許権者等が第三者に特許発明の実施を許諾することによって生じる「許諾実施権」がある。これらの通常実施権のうち「許諾実施権」が最も多いので、本稿では通常実施権については「許諾実施権」に絞って説明する。 専用実施権と通常実施権は、地域(例えば静岡県内)、期間(例えば2008年9月から2011年8月までの間)、技術分野(例えば特許発明の装置を半導体製造にのみ用いる)、実施料(例えば売上の3パーセント)等、許諾する範囲(条件)を決めることができる点において共通するが、次の表に示すように種々の相違点を有する。

 表

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)現行法の下においては、特許権を対象とした専用実施権、通常実施権のみ特許庁に登録することが可能である。すなわち、特許出願を行い、審査にパスし、特許料を納付して特許権が付与された後でなければ、実施権を特許庁に登録できない。従って、特許が付与される前の特許出願段階では実施権を登録することができない。上記表に示したように、専用実施権は特許庁への登録が効力発生要件であり、通常実施権は特許庁への登録は第三者対抗要件である。 近年では知的財産を売買するビジネスが多く行われるようになってきており、また企業の買収・合併(M&A)も盛んになっている。これに伴って、特許権等の産業財産権の移転が増加している。このような状況では、専用実施権と通常実施権を特許庁に登録しておかないと、実施許諾のライセンス契約をした特許権者である企業(ライセンサー)が特許権を他社へ譲渡したり、他の企業に買収された場合には、実施権者(ライセンシー)が従前のライセンス契約に基づいた事業継続ができなくなってしまう問題がある。 ところが現行法では上述のように特許権が付与された後にしか実施権の登録を認めておらず、特許出願段階(特許成立前)においては実施権の登録制度がなく、ライセンシーの保護が不十分である。 そこで、特許出願段階であっても実施権について特許庁への登録を認める「仮専用実施権」及び「仮通常実施権」の登録制度を創設する法改正を行った。 登録の効果として、「仮専用実施権」又は「仮通常実施権」の登録を行った実施権者は、登録した内容で第三者に対抗することができる。従って、特許出願人である企業が特許出願を第三者に譲渡したり、M&Aの対象になったりした場合でも、仮専用実施権者や仮通常実施権者(ライセンシー)は、新しく特許権者になった企業に対しても実施権を主張でき、事業継続が不可能になるのを防止することができる。 また、「仮専用実施権」又は「仮通常実施権」を許諾した特許出願人である企業が破産した場合においても、破産法56条の適用により、破産管財人はライセンス契約を解除することができない。

産業財産権に関する質問その他の改正法の内容はどのようなものなのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え(1)通常実施権、仮通常実施権に係る登録事項の開示が制限される。 通常実施権を特許庁に登録する場合、実施許諾をする者の氏名、実施許諾を受ける者の氏名、通常実施権の範囲、対価の額等を登録し、この登録内容は対外的に開示され、第三者が閲覧することが可能な状態となる。このため登録内容からライバル企業にビジネスの動向を察知されるなど、通常実施権者等の利害を害するおそれもあった。そこで、利害関係人にのみ開示する制度を導入した。 なお、専用実施権は、特許権と同様に他人に対して損害賠償等を請求し得る独占排他性を有する権利であり、第三者に与える影響が大きいことから、現行通り登録内容をすべて開示することとした。
(2)特許の拒絶査定不服審判請求期間が長くなった。 審査において拒絶され、それに不服である場合には拒絶査定不服審判を請求することができる。この審判は審査の上級審に当たるものである。 現行では審判請求できる期間は拒絶査定の謄本の送達の日から30日以内であり、審判を請求する者にとって短く、審判請求をするか否かの判断期間としては不十分であるという意見があった。そこで、拒絶査定不服審判を請求することができる期間を、拒絶査定の謄本の送達の日から3ヶ月以内とした。
なお、改正法の施行日は決定事項ではないが平成21年4月頃になると思われる。  

産業財産権に関する質問特許出願の審査はどのような手順で行われるのですか?

産業財産権に関する質問に対する答え  特許出願の審査は次のフローチャートに示す手順で行われる。



(1)特許出願
まず、特許庁へ特許出願を行う。特許出願をした日を特許出願日という。
特許出願書類は、出願人や発明者の住所、氏名(名称)等を記載する願書、 権利請求の範囲を記載する特許請求の範囲や、発明の詳細な説明を記載する 明細書、更に必要な図面から構成されている。特許出願を行うと、特許庁から背番号が付与される。これを出願番号といい、例えば「特願2009−12345」と表示される。

(2)出願公開
出願日から1年6ヶ月経過すると、出願公開がされる。出願公開とは、特許出願書類を誰でも見ることができるように公開することで、例えば、特許庁のホームページの特許電子図書館(IPDL)で見ることができるようになる。出願公開は、第三者の調査の便宜等の為に行われるものなので、その特許出願が審査されているか否かは関係なく行われる。 上記のように、特許出願は1年6ヶ月経過しないと公開されないので、言い換えれば、出願日から1年6ヶ月経過する前までは、第三者は出願内容はもとより、特許出願されたことも知ることはできない。

(3)出願審査請求
特許出願は、出願審査請求が為されたものについてだけ、審査官による審査がされる。出願審査請求を行うことができる期間を出願審査請求期間といい、出願日から3年以内である。出願審査請求を行わないまま3年経過すると、その特許出願は取り下げられたものとみなされる。特許出願が取り下げられたものとみなされてしまうのだから、審査請求を必ずしなければならないのか?という質問をよく受けるが、審査請求をするかしないかは、出願人の自由だ。審査請求を行う割合はおよそ50%であり、残りの特許出願は審査を受けることなく、取り下げたものとみなされる。
どうして特許出願のおよそ50%しか審査請求されないのかというと、審査請求期間の3年間のうちに、権利化を目指すのを止めたり、また、実務的には、所謂「特許出願中」だけで十分であると考えたりする場合があるからである。審査請求は出願人以外の第三者も行うことができる。審査請求が為された特許出願は、審査官によって審査される。

(4)特許査定
審査により、特許要件を具備していると判断されると、特許査定がされ、出願人に通知される。これを特許査定の謄本の送達といい、この謄本を受け取った出願人が、特許庁に特許料(登録料)を納付することによって、特許権が発生する。

(5)拒絶理由通知
審査官が審査した結果、その特許出願に拒絶理由があると判断された場合は、拒絶理由通知が出願人に送られる。この拒絶理由通知には、その理由と、更に拒絶理由の根拠となる資料(引例という)が記載されている。
拒絶理由通知を受け取った出願人は意見書や、補正書を提出して、特許請求の範囲等を出願当初の範囲で補正して反論することができる。意見書等を提出することによって審査官の考えが変わり、特許してもいいということになると、前述のように特許査定の謄本が送達される。

(6)拒絶査定
意見書等を提出しても審査官の考えが変わらない場合、又は意見書等を提出しない場合には、拒絶査定の謄本が送達され、この拒絶査定に対しては、拒絶査定不服の審判を請求して上級審で争うことができる。

産業財産権に関する質問どのような発明であれば特許庁の審査にパスできるのですか?

産業財産権に関する質問に対する答え   特許庁の審査にパスするためには、新規性、進歩性、先願であること、が必要である。

(1)新規性
発明が客観的に新しいことをいい、
?@ 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
?A 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明
?B 特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
であるときは新規性がないとされている。

?@の公然知られた発明とは、不特定人(発明者のために秘密を守る義務の無い人)に知られることをいう。従って、例えば、会社にたまたま来たセールスマンに発明の内容を説明すれば、その発明は公然知られたことになる。
?Aの公然実施された発明とは、例えば、発明が包装装置で、その包装装置を展示会で運転した場合は公然実施されたことになる。
?Bの頒布された刊行物に記載された発明とは、例えば、新聞や雑誌に発明品が掲載された場合である。

(2)進歩性
その道の専門家(当業者)が特許出願時における技術水準から容易に考え出すことができない程度をいう。
例えば、ラジオとカセットテーププレーヤが別々に存在していたと仮定し、両方が一緒に存在するほうが便利だと考え、両方を接着剤でくっつけたというだけでは進歩性が無いとされると思われる。
これに対し、ラジオとカセットテーププレーヤとを一体にして、ラジオで受信した音声をカセットに録音できる機能を付加した場合は、進歩性があるとされそうである。

(3)先願
同じ内容の特許出願については特許庁に早く出した者勝ちであり、早く出した出願が特許される。これを先願主義という。
先に出した出願を先願、後から出した出願を後願といい、先願であるか後願であるかは特許出願同士だけでなく、実用新案登録出願との間においても判断される。

産業財産権に関する質問自社製品を輸出することを計画しており、輸出国において特許等の産業財産権による保護が必要であると考えていますが、外国で産業財産権を取るための仕組みはどのようなものなのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え 外国で産業財産権を取得するためには、その外国へ出願を行う必要があり、取得した産業財産権の効力はその国だけに及ぶことになっている。従って、原則として産業財産権の取得を希望する国毎に出願を行う必要がある。 法制や言語の違いから外国で産業財産権を取得するのは自国よりも大きな負担がかかる。そこで、この負担を軽減するための国際条約が締結されている。 産業財産権に関する主な条約は次の通りである。 (1)パリ条約 パリ条約は1884年に発効され、現在約160ヶ国が加盟しており、日本は1899年(明治32年)以来加入している。 パリ条約は「優先権」、「内国民待遇」、「特許独立の原則」等について規定している。 「優先権」 自国の出願の日から所定期間内に外国へ出願をした場合に、その外国の出願を自国の出願日に提出したものとして取り扱うことを「優先権」と言う。 パリ条約で優先権を認めているのは、外国へ国内と同時に出願することは殆ど不可能であることから、出願人の時間的な負担を軽減して、外国で特許等を取りやすくするためである。 従って、外国出願をする場合は、自国の出願の日から優先期間内(特許出願日、実用新案登録出願日から12ヶ月以内、意匠登録出願日、商標登録出願日から6ヶ月以内)に出願することが重要である。 「内国民待遇」 産業財産権の保護に関して、パリ条約の同盟国において内国民(自国民)とパリ条約に加盟している国の外国人とを差別してはならず、平等に扱わなければならないことを「内国民待遇」という。 従って、出願された発明の審査において、外国人にだけ審査の基準を厳しくすることはパリ条約違反となり認められないことになる。 「特許独立の原則」 パリ条約の同盟国においては、各国の特許出願は独立して審査され、また特許の無効、消滅においても独立で、他の国において無効等にされたことを理由にして無効等にはならないことを「特許独立の原則」と言う。 1つの国で特許が無効にされたことを理由に他の国でも無効にするのは、特許の国際的保護に欠け、出願人(権利者)にとって酷だからだ。

外国フローチャート1

 

 

 

 

(2)特許協力条約(PCT) PCTは1978年に発効され、現在約140ヶ国が加盟している。PCTは特許、実用新案についての条約であり、国際出願、国際予備審査等について規定している。 「国際出願」 PCTに従って行う出願を「国際出願」といい、この国際出願は日本の特許庁へ1つするだけで、PCT加盟国に日本出願と同時に出願したのと同じ効果を得ることができる。 「国際調査」「国際予備審査」 この国際出願は権利取得を希望する国の審査を受ける前に、国際出願の内容と似た先行出願等があるかを調べる「国際調査」を受けることができる。また、国際調査の結果を資料として特許を取得できそうかどうかの見解を示す「見解書」が作成される。この「見解書」に不満がある場合には、国際予備審査を請求して答弁書や補正書を提出することにより反論することが可能である。そして、提出された答弁書や補正書の内容を踏まえて国際予備審査が行われ、その結果は「国際予備審査報告」として通知される。 「国内段階への移行」 国際出願について権利取得を希望する国で審査を受けるためには、国際出願を国際段階から権利取得を希望する国へ移行させる手続が必要である。この権利取得を希望する国へ移行させることを、「国内段階への移行」と言う。 国内段階への移行手続は、日本の出願日から原則として30ヶ月経過するまでに行えばよい。従って、出願人は国際調査、見解書、国際予備審査報告をもとに各国で本格的な審査を受けるかどうか決めるための期間を得ることができる。 国内段階への移行は翻訳文の提出等が必要であることから大きな費用が発生する。上記のようにPCTを利用することで国際調査等の資料をもとに、しかも時間的な余裕をもって国内段階へ移行する否かの判断ができるので、無駄な国内段階への移行を行わないことで経済的なメリットを得られることもある。

外国フローチャート2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:後藤晴男『パリ条約講話』(社団法人発明協会)
橋本良郎『特許協力条約逐条解説』(社団法人発明協会)

産業財産権に関する質問新聞を読んでいたら高輝度青色LEDの基本特許が切れると新規参入が加速する旨の記事がありました。また、薬局で「特許が切れたジェネリック薬品にしますか。」と聞かれました。特許切れってどのようなことをいうのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え   (1)「特許切れ」とは、特許権の存続期間が満了することをいう。特許権の存続期間は原則として出願日から20年である。つまり特許権は出願日から20年経つと消滅し、消滅した特許の内容はだれでも自由に実施することができるようになる。なお、医薬品の臨床実験等、特許製品販売までに一定の期間を要する場合などは、出願日から25年を上限として存続期間の延長が認められる場合がある。
 特許権に存続期間を設けているのは、発明の保護と利用の調和を図るためである。特許権は新規な発明を公開した代償として与えられる独占排他権であり、特許権存続中においては特許権者以外の者の特許発明の実施が制限され、これにより発明の保護が図られる。一方、陳腐化した技術に特許権を付与したままにして、いつまでも特許発明の実施を制限したのでは発明の利用を図ることができない。そこで、発明の保護と利用の調和を図る上で適当な特許権の存続期間として上記20年が定められている。
 特許権は存続期間が満了する前でも消滅することがある。
例えば、特許権を維持するためには毎年、特許料(以下、年金という。)を特許庁に払い続ける必要があるが、この年金は特許権者の意思で支払いを停止することができる。従って、年金の支払いを止めれば特許権の存続期間満了前でも特許権が消滅することになる。
また、特許無効審判が請求されて、審理の結果として全ての請求項を無効とする無効審決がでれば特許権が消滅することになる。
従って、存続期間満了前でも特許権が存在しているか否かは特許原簿を取り寄せて確認することが必要である。

(2)なお、特許権以外の産業財産権にも、それぞれ権利の存続期間が設けられている。
実用新案権の存続期間は出願日から10年である。ライフサイクルの短い考案を保護するという制度趣旨から特許権より存続期間を短いものとしている。
意匠権の存続期間は登録日から20年である。特許権と異なり、起算日が出願日ではなく登録日である。

  商標権の存続期間は登録日から10年である。ただし、商標権は運転免許のように更新が認められる。商標権の保護対象は発明のような技術ではなく商標(マーク)なので、広く開放して利用を図る必要はないからである。

産業財産権に関する質問新製品を開発しましたが、技術内容が既存品の改良なので特許出願しても拒絶されるのではないかと考えてしまい、出願しようか迷っています。どのようにしたらよいでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え(1)特許出願するか否かを判断する場合に最も重要なのは、技術内容が企業にとって法的保護が必要であるか否かである。特許性が低いと思われる場合でも、その技術が当該企業にとって法的保護が必要である場合は特許出願することもあり、また特許性が高いと思われる場合でも当該企業にとって法的保護の必要性がない技術であれば特許出願する必要はないことになる。
特許されるか否かは専門的であり、その判断は専門家でも難しいことが少なくない。特許出願の審査において、拒絶の根拠となる証拠(以下、引例という。)は必ずしも1件ではなく、複数の引例の存在を理由に拒絶されることが多い。すなわち、特許出願1件に対し引例Aと引例Bとが特許出願日より先に公開されており、引例Aの発明と引例Bの発明の両方が存在していることを理由に容易に考え付くものであるとされ、進歩性がないとされる場合がある。このように複数の引例が組み合わされることを想定して特許性を判断することは容易ではない。

(2)対応策としては、先願・先登録調査を行う方法もある。特許出願は出願日から1年6ケ月を経過すると出願公開され、実用新案登録出願は登録されると公開される。これらは特許庁で公開しているデータベースである特許電子図書館(IPDL)等を用いて検索することができる。従って、開発した技術内容と似た内容の特許出願等があるかどうかを調査することも可能だ。ただし、上記したように特許出願は出願日から1年6ケ月経過して公開される。言い換えれば出願日から1年6ケ月間は公開されず調査対象に含めることはできないので注意が必要だ。また専門家でも完全な調査は容易ではなく、調査費用が出願費用を上回ることも珍しくないので、調査は簡単なものにして出願を行うなどのケースバイケースの判断が必要である。

(3)特許出願を行い、審査請求を保留しておく手もある。特許出願は特許庁に提出しただけでは審査されず、審査請求をしたものだけが審査される。審査請求を保留しておくことができる期間(審査請求期間)は出願日から3年である。従って、まずは特許出願を行い先願権を確保して、それから審査請求をするか否かを検討するという手もある。審査請求をしないまま3年経過すると、その特許出願は取り下げられたものとみなされる。但し、この取り下げられたものとみなされた特許出願(先願という。)より後に出された同じ内容の他人の特許出願は先願の存在によって拒絶されることになる。よって、特許出願は他人が同じ内容の特許権を取得するのを阻止する効果もある。

 

参考文献
特許法概説 第13版 吉藤幸朔 著 熊谷健一 補訂 (有斐閣)

産業財産権に関する質問自社商品である酒の名称について日本においては商標権を取得し、日本国内で販売してきましたが、この商品を輸出することになりました。日本で商標権を取得していれば、その効力は輸出国においても及ぶのでしょうか?

産業財産権に関する質問に対する答え    商標権は原則として各国ごとに取得し、その効力も各国ごとに及ぶ。従って、日本で商標権を取得しても、その効力は外国には及ばない。輸出国において自社の商標(ブランド)を守りたいということであれば、その国において商標権を取得する必要がある。
 外国で商標権を取得する場合、原則として各国(中国、アメリカ等)の特許庁が審査を行う。これらの特許庁における審査は各国ごとに定められた商標法に基づいて行われる。
商標登録出願を行う場合は、商標(マーク)と、この商標を使用する商品・役務を指定する必要がある。例えば、商標については日本語で表したものにするか、その国の言語で表したものにするか等を検討する必要がある。日本語の文字で外国へ商標登録出願した場合、文字商標ではなく、図形商標として取り扱われてしまい、十分な法的保護を受けられないおそれもあるので、注意が必要だ。
また、商品・役務については多くの国で商品・役務をカテゴリーごとに分けた区分表を採用するが、この区分表は各国ごとに異なり、また出願対象にしようとする商品・役務がどの区分に属するかの判断基準も異なり、更に商品・役務の表現方法も異なるので注意が必要だ。
また、各国ごとに商標登録を認める条件が異なる。例えば、アメリカやカナダにおいては、原則としてその国において商標を実際に使用していることが登録の条件になる。
 更に、商標権を継続して維持するためには、その国において登録商標を指定商品に使用していることの証明(使用証明)を特許庁に提出しなくてはならない国もある。例えば、アメリカ、フィリピンがこれに当たる。

産業財産権に関する質問当社は工作機械メーカーで、新製品の独自技術について日本国内で特許出願をしました。この新製品の工作機械を輸出することが決まり、輸出国を含めた複数の国に特許出願することを検討中です。外国出願するに当たり注意すべき点を教えてください。

産業財産権に関する質問に対する答え 外国特許出願を行う場合、大きく分けて2つのルートがある。パリ条約に基づく出願(以下、パリ出願という。)と特許協力条約に基づく出願(以下、PCT出願という。)だ。


(1)パリ出願

  170以上の国や地域が加盟する産業財産権に関する国際条約で、加盟国の国民はパリ条約に基づく権利を主張して加盟国へ出願することができる。この場合、特許出願の内容を権利取得を求める国の言語に翻訳して、その翻訳文で出願する必要がある。従って、アメリカと中国に出願する場合には、英語と中国語の翻訳文を用意しなければならないことになり、出願当初に比較的大きな費用が発生することになる。
 外国で特許権を取得するためには、外国の特許庁とのやり取りを行うことになるので、当該国の専門家を通して手続を行うことが必要である。

(2) PCT出願

PCT出願は出願当初には日本語で出願できる点がパリ出願との大きな違いだ。PCT出願は、PCTで規定された受理官庁としての日本特許庁へ出願を行う。PCT出願は、すべてのPCT加盟国について出願したものとみなされることになる。この外国出願したものとみなされた状態となっているPCT出願について最終的に特許権を取得する国を絞り込む手続を国内移行という。この国内移行は翻訳文等の必要書類を提出し、所定の費用を支払って、権利取得を希望する国に移行させる手続である。この国内移行は出願日(PCT出願のもとになった日本出願があれば日本の出願日)から30ヶ月以内に行う必要がある。
PCT出願では上記の国内移行を行う前に国際予備審査報告を入手することができる。国際予備審査報告はPCTで規定された国際予備審査機関としての日本特許庁が行うもので、特許性についての予備的な見解が記載されている。従って、出願人はこの国際予備審査報告の内容を勘案し、更に費用をかけて国内移行を行うか否かを決めることができる。

パリ出願、PCT出願のいずれを選択すべきであるかは、ケースバイケースなので、外国出願に詳しい専門家と相談して決定すべきである。
また、パリ出願、PCT出願のいずれについても日本特許庁に対する日本特許出願から12ヶ月以内に行うべきである。「優先権」を主張することができるからだ。
「優先権」とは、日本特許出願の日から12ヶ月以内に外国出願した場合、その外国出願の審査を日本の出願日を基準に行ってくれる国際条約上の利益のことである。各国の言語や法制の違いから日本と同時に外国へ出願することは殆ど不可能であることから採用されたものだ。殆どの国で早く出願した者勝ち(先願主義)を採用するため、「優先権」を主張することは出願人にとって極めて重要なものとなる。

産業財産権に関する質問当社は工作機械メーカーですが、取引先の紹介で他のメーカーから特許権を買わないか(有償で譲渡を受けないか)という話があり、特許証と特許公報を提示されました。提示された特許公報を見ると、当社が近い将来、製造・販売しようと考えている工作機械に関する内容なので、金額が見合えば特許権を買ってもいいと考えています。どのような点に注意したらよいのでしょうか

産業財産権に関する質問に対する答え    (1)特許原簿を特許庁から取り寄せて、その内容を確認する必要がある。特許証を持っていても、それが必ずしも特許権者である証にはならないので、注意が必要だ。
?@特許原簿でその特許権が存続しているか否かを確認する。
特許権は特許料(年金)を納付しなかったり、特許無効審判が請求されて、特許無効審決がなされたりすると消滅する。従って、特許公報を提示されたからといって、必ずしも特許権が存続しているとは限らない。
上記のように年金を納付しない場合には、特許権が消滅することになるので、年金が何年分納付してあるかも確認しておくべきである。
また、特許権の存続期間が何年残っているかを確認する。残存期間によって特許権の価値が異なるからである。特許権の存続期間は原則として特許出願の日から20年である。
?A 現在の特許権者が誰であるかを確認する。
特許権は移転することが可能であり、特許公報に記載された特許権者と異なる別の者が現在の特許権者になっていることもあるからである。
また、特許公報の記載では特許権者が単独になっていても、特許権の一部が他人に譲渡されて特許権が複数の権利者の共有になっていることもある。特許権が共有に係る場合は、各共有者は他の共有者の承諾を得なければ、自分の持分であっても譲渡することができない等の制限を受ける。なお、各共有者は他の共有者の承諾がなくても、特許発明を実施することができる。従って、自社が特許権の一部の譲渡を受けても、他の共有者による特許発明の工作機械の製造・販売を止めることはできない。
?B 実施権が設定されていないかを確認する。
特許権には特許発明の実施を第三者に許諾する実施権を設定することができる。
実施権には専用実施権と通常実施権があり、専用実施権が設定された範囲では特許権者といえども特許発明の実施が制限されることになる。従って、特許権の譲渡を受けても、自らが特許発明の実施をすることができない場合もあるので注意が必要だ。専用実施権は特許原簿への登録が効力発生要件とされているので、特許原簿で確認することができる。
通常実施権は特許発明の実施を単に許される権利なので、通常実施権が設定されていても特許権者は特許発明を実施できる。また、通常実施権は特許原簿への登録が第三者対抗要件となっている。従って、特許原簿に通常実施権設定の記載がなくても、通常実施権が設定されていないとは限らない。
専用実施権はもとより通常実施権が設定されているか否かは特許権の価値に大きな影響を及ぼすので、特許権者に実施権設定の有無を確かめる必要がある。
?C 質権が設定されていないか確認する。
質権者は原則として特許発明の実施をすることはできない。しかし、契約で別段の定めがある場合は質権者は特許発明を実施することができるので、注意が必要だ。
また、質権が実行されれば、質権者が特許権者となり得る。質権が設定されている特許権の譲渡を受けることはリスクが伴うので、特許権者に質権の登録を抹消してもらってから、特許権の譲渡を受けることが賢明である。
?D その他、特許原簿には特許権移転の履歴、質権者の変更等の種々の情報が記載されているので、特許権の譲渡を受けないかという話があった場合に限らず、実施権の設定を受ける場合、更に特許権を侵害している旨の警告書が送られてきた場合等には必ずチェックする必要がある。

(2) 特許請求の範囲によって特許権の効力の範囲を確認する。 自社で製造・販売しようとしている工作機械が特許権の効力の範囲に入るものであるかを確認する必要がある。当該工作機械が特許権の効力の範囲に入らないものであれば特許権を買う必要がないからだ。
また、特許後においても訂正請求や訂正審判において、特許請求の範囲の内容が変わることもあるので、注意する必要がある。
特許権の効力に入るか否かの判断は専門的でかなり難しいので、弁理士の鑑定を受けることが賢明である。

(3) 譲渡対象となっている特許権に関連する他の特許権、実用新案権、意匠権がないかを確認する。提示された特許権だけの譲渡を受けても他の特許権等の存在によって工作機械の製造ができない場合もあり得るからである。なお、他人の特許発明を利用する場合は譲渡された特許発明の実施が制限を受けるので、この点も注意が必要だ。

(4) 技術指導等が受けられるか否かを確認する。
特許権だけを譲り受けても製造上のノウハウ等があり、技術指導等がないと実際には工作機械を製造できない場合もあるので、特許発明の工作機械を実際に製造するために、どのようなものが必要であるかを検討する必要がある。

(5) 特許権の価格についても検討する。
当然のことであるが特許製品である工作機械を製造し、それを販売してはじめて企業は利益を得ることができるので、特許権の価格が適正であるかについても十分に検討する必要がある。

(6) その他
特許権の譲渡を受け、それに基づいてビジネスを行おうとする場合は、上記したように多くの難しい点があるので、弁理士、弁護士等の専門家に相談すべきである。
自社で開発した技術について特許出願した場合は、特許権者が製造ノウハウ、販売ルート等を持っていることが多いが、他人から特許権を譲渡してもらう場合にはそうでないことも少なくない。

うまい儲け話など滅多にないということを常に頭に置きながら、他社から特許権の譲渡を受け、それを活用することを考えて頂ければと思う。

産業財産権に関する質問 佐藤食品工業の「切り餅」が越後製菓の特許権を侵害しているとして、損害賠償を認めたとのニュースを見ましたが、どのようなことなのでしょうか

産業財産権に関する質問に対する答え    (1)今回、ニュースになったのは、知的財産高等裁判所(以下、知財高裁という。)の判決である。一審東京地方裁判所においては特許権を侵害しない旨の判決が出され、更に上級審である知財高裁で争われて一審判決が覆される結果となった。
(2)本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、 「焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け、この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として、 焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする餅。」と記載されている。
 構成要件とは請求項に記載された内容のことで、この構成要件すべてを被告製品が具備していて特許権侵害が成立することになる。言い換えれば、原則として構成要件が1つでも抜けていれば侵害が成立しないことになる。
 主な争点は、「切餅の載置底面又は平坦上面ではなく…複数の切り込み部又は溝部を設けたこと」の解釈である。
 佐藤食品工業の主張は、本件特許は「載置底面又は平坦上面ではなく」は「載置底面又は平坦上面に切り込み部等が存在しない」ことを意味し、これを構成要件としているのだから、「切餅の載置底面や平坦上面に切り込み部等が存在する」被告製品は特許権を侵害していないというものである。
 越後製菓の主張は「載置底面又は平坦上面ではなく」は、「側周面に切込み部等が存在する」ということを明確にしている(強調している)だけであり、「側周面に切り込み部等が存在する」被告製品は「切餅の載置底面や平坦上面に切り込み部等が存在する、しない」に拘らず、特許権侵害に該当するというものである。
 一審では佐藤食品工業の主張が通り、控訴審では越後製菓の主張が通ったかたちになったが、今後の展開がどのようになるか興味深いところである。

産業財産権に関する質問中国の商標登録制度はどのようなものなのでしょうか。 自社製品である緑茶は日本国内で名の通ったもので、その名称を日本国内において商標登録をしていますが、この緑茶を中国へ輸出しようと考えています。中国においても商標登録した方がいいのでしょうか

産業財産権に関する質問に対する答え    (1)最近、中国において日本の有名な商標や産地名などが商標登録されたという報道がなされている。確かに中国は国の規模が桁外れに大きく、商標登録についても日本の感覚をそのまま持ち込むことはできない。商標登録出願の件数も中国では1年に100万件以上であり、世界一である。この出願件数は日本の約10倍である。
(2)商標登録出願では中国商標局に出願書類を提出し、審査にパスしたものについて商標登録が認められる。この出願書類には出願人、商標、指定商品・役務等を記載する必要がある。指定商品・役務は区分表に従って記載する。因みに「緑茶」は第30類「茶及び茶葉代用品」に含まれる。
 また、先願主義を採用しており、先に出願されたものについて優先して登録される。
(3)審査手続は、「中国商標出願の経過」に示すように、出願→審査→公告→登録で手続が進行する。
 公告後3ヶ月以内に異議申立を行うことができ、異議申立に対し出願人は答弁書を提出して反論することが可能である。そして、異議決定がされて商標登録または拒絶査定される。
 商標登録された場合の存続期間は10年で、更新が可能である。また、拒絶査定に対しては審判を請求して争うことができる。
(4)中国商標法では日本の商標法で規定されているような「先使用権」は認められていない。「先使用権」とは使用した結果として需要者の間で広く知られた場合、他人が商標権を取得しても、商標を継続して使用できるという権利のことである。いわば商標使用によって生じる既得権といえるものだ。中国では「先使用権」が認められていないので、日本に比べて商標登録する必要性がより高いと言えそうである。
(5)中国に商品を輸出しようとする場合は、中国において商標登録をすべきである。これは国の内外を問わず自社ブランドを守ることはビジネスの基本であり、そのための手段が商標登録だからだ。