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2015年10月 アーカイブ

2015年10月21日

2020年東京オリンピックのエンブレムに関する報道の中に著作権、商標権という言葉が度々出てきますが、これらはどのような権利なのでしょうか。

(1)著作権について説明する。
(著作権の発生)
 著作権は、著作物を創作することにより発生する。著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
 エンブレムに限らず、小説、論文、絵画、楽曲等が著作権によって保護される。著作権は、権利の取得にあたって役所などに届け出る必要はなく、著作物を創作したときに発生する。これを無方式主義という。
 子供が漫画を描いても、それが著作物であれば著作権が発生することになる。
(著作権の内容)
 著作権は、「財産権としての著作権」と「著作者人格権」の2つに分けられる。
 「財産権としての著作権」
 例えば、エンブレムを創作したデザイナーが、このエンブレムの使用を希望する企業と契約して使用料を得る場合が「財産権としての著作権」の行使ということになる。エンブレムを企業の商品に付す、すなわちデザイナーがエンブレムの複製を第三者に認めることで利益を得るわけだ。これを複製権といい、著作権制度の中心となる。
 「財産権としての著作権」の存続期間は原則として著作者の死後50年で終了する。この「財産権としての著作権」は譲渡することができる。従って、会社がデザイナーからエンブレムに関する「財産権としての著作権」を譲渡してもらい、この譲渡してもらった「財産権としての著作権」に基づいて第三者へエンブレムの使用を許諾して、使用料を得ることもできる。
 「著作者人格権」
 例えば、デザイナー(著作者)に無断でエンブレムの一部を変更して使用すると、「著作者人格権」を侵害するおそれがある。デザイナーの人格的利益を害することになるからだ。「著作者人格権」は著作者の死亡によって消滅する。「著作者人格権」は譲渡することができない。デザイナーの人格的利益を護るものであり、一身専属的なものだからだ。
 このように著作権が一般に解り難い理由は、「財産権としての著作権」と「著作者人格権」という2つの性質をもっているからだと思われる。
(著作権の侵害)
 著作権侵害というためには、「依拠性」と「類似性」が必要であると考えられている。
 「依拠性」とは、他人の著作物に基づいて創作されたことをいい、例えばデザイナーが他人のエンブレムを見て、これに基づいてエンブレムをデザインしたのであれば「依拠性」があり、まったく知らないでエンブレムをデザインしたのであれば「依拠性」がないということになる。このことから著作権は相対的権利であるといわれる。
 「類似性」とは、簡単に言えば似ていることであるが、例えばエンブレムの形状が似ているだけで類似性があるとは言い切れない。エンブレムの表現形式の本質的な特徴が似ていなければ類似性がないとされると考えられる。

(2)商標権について説明する。
(商標権の発生)
 商標権は、特許庁に商標登録出願を行い、審査にパスし、更に登録料を納付することで発生する。商標とは、事業者が自己の商品・役務(サービス)を他人のものと区別するために使用するマーク(識別標識)である。
 エンブレムに限らず、文字、記号、立体的な形状等も商標となる。
 商標権を取得するためには上記のように出願が必要であり、これを方式主義という。
(商標権の内容)
 商標権は、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標を使用する権利を専有することを内容としている。すなわち、登録商標を正当な権限のない他人が指定商品又は指定役務に使用することは認められない。商標権が独占排他権と呼ばれる所以である。
 なお、指定商品(指定役務)について使用を許諾する使用権を設定することも可能である。
 商標権の存続期間は設定登録の日から10年である。ただし、更新登録申請によって更新でき、20年、30年、40年…存続させることが可能である。従って、半永久的権利ということができる。
(商標権の侵害)
 登録商標や登録商標に類似する商標を指定商品(指定役務)や指定商品(指定役務)に類似する商品(役務)に使用すると商標権侵害となる。商標権は独占排他権であり、併存を認めない絶対的権利である。
 例えば、エンブレムについて菓子を指定商品とした商標権が存在する場合、第三者が無断で登録商標であるエンブレムを菓子に使用すると商標権侵害になる。ただし、エンブレムを文房具に使用しても商標権侵害にはならない。菓子と文房具は異なる商品であり、商標権の効力範囲を構成する指定商品についての使用ではないからだ。
 登録商標と類似する商標を指定商品(指定役務)に類似する商品(役務)に使用しても商標権侵害であるとみなされる。

(3)上記のように著作権と商標権は似て非なるものであるともいえるが、エンブレムは著作権と商標権のいずれによっても保護される。逆に言えばエンブレムは著作権と商標権のいずれも侵害してしまうおそれがある。このため、2020年東京オリンピックのエンブレムに関する報道の中に著作権、商標権の両方の言葉が度々でてきているのである。

企業の従業員の発明はすべて職務発明になるのでしょうか。また、職務発明についての規定が改正されると聞きましたが、その内容はどのようなものなのでしょうか。

企業の従業員の発明のすべてが職務発明になるわけではない。従業員の発明は次のように分けられる。
「職務発明」
 会社の業務範囲に属し、発明をするに至った行為が従業員の現在または過去の職務に属する発明のことである。
 例えば、自動車メーカーの研究員が燃費のよいエンジンの発明をした場合は職務発明に該当する。
「業務発明」
 会社の業務範囲に属し、職務発明ではない発明のことである。
 例えば、自動車メーカーの営業マンが燃費のよいエンジンの発明をした場合は業務発明に該当する。
「自由発明」
 会社の業務範囲に属しない発明のことである。
 例えば、自動車メーカーの研究員が芯の折れ難いシャープペンの発明をした場合は自由発明に該当する。
(職務発明規定)
 原則的には、発明者が「特許を受ける権利」を有し、「特許を受ける権利」を発明者から会社に譲渡して、これに基づいて会社が特許出願をする内容となっている。
 今回の特許法改正のポイントは、職務発明については勤務規則等で「特許を受ける権利」をあらかじめ会社に取得させることが可能となったことである。すなわち、職務発明についての「特許を受ける権利」を発明者→会社というルートをとらず、いきなり会社が取得することを可能とした。注意すべき点としては、勤務規則等で定めた場合にのみ上記の取り扱いができるのであって、定めていない場合には「特許を受ける権利」は発明者→会社というルートで譲渡する必要がある。

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