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2012年10月 アーカイブ

2012年10月22日

報道等で「特許権の侵害」という言葉をよく聞きますが、そもそも特許権の侵害とはどのようなことなのでしょうか?

特許権の侵害がどのようなものであるかを説明するのは容易ではない。そこで、ごく簡単な事例で説明したいと思う。
特許出願の特許明細書には特許請求の範囲が記載されている。この特許請求の範囲に記載された発明(特許発明)が特許権の本体ということになる。
特許請求の範囲には請求項が記載され、この請求項は複数記載することが可能で、複数ある場合は【請求項1】、【請求項2】…と分けて記載されている。
仮に鉛筆について特許出願が行われ、特許庁の審査にパスして特許権が取得されたとして説明する。

特許請求の範囲には次のように記載されている。

【請求項1】
黒鉛を含んだ細長い形状の芯と、前記芯が挿入され固定された六角柱状の軸とから成ることを特徴とする筆記具。

この請求項1を構成要件毎に分けると、
A.「黒鉛を含んだ細長い形状の芯」
B.「前記芯が挿入され固定された六角柱状の軸」
となる。
特許権の侵害が成立するためには、他社の鉛筆(イ号鉛筆)が構成要件の全てを具備していることが必要である。言い換えれば、構成要件が一つでも欠落しているイ号鉛筆は、特許権を侵害しないことになる。

(例1) イ号鉛筆の軸が「丸棒状」である場合、特許権の侵害は成立するだろうか。
すなわち、イ号鉛筆の構成要件が、
A.「黒鉛を含んだ細長い形状の芯」
C.「前記芯が挿入され固定された丸棒状の軸」
である場合だ。
このイ号鉛筆については特許権の侵害が成立しないことになる。「六角柱状」と記載されている上記Bの構成要件を具備していないからである。

(例2) イ号鉛筆が、軸の一端に消しゴムを取り付けたものである場合はどうだろうか。
消しゴム付であること以外は、請求項1の構成要件A、Bを具備している。
すなわち、イ号鉛筆の構成要件が、
A.「黒鉛を含んだ細長い形状の芯」
B.「前記芯が挿入され固定された六角柱状の軸」
C.「軸の一端に取り付けられた消しゴム」
である場合だ。
このイ号鉛筆については特許権の侵害が成立することになる。Cが加わっても、イ号鉛筆は請求項1のすべての構成要件(A、B)を具備しているからである。

(例3) イ号鉛筆の軸が「五角柱状」である場合はどうだろか。
イ号鉛筆の構成要件が、
A.「黒鉛を含んだ細長い形状の芯」
C.「前記芯が挿入され固定された五角柱状の軸」
である場合だ。
このイ号鉛筆については特許権の侵害が成立する可能性がある。均等論という考え方があるからだ。上記したように原則論を適用すれば、イ号鉛筆が請求項の構成要件の全てを具備しなければ特許権の侵害が成立しない。しかしながら、この原則論を適用すると、特許権者の保護が不十分となってしまう場合がある。これを防止しようする考え方が均等論だ。均等論は、構成要件が多少違っても同じ作用効果を発揮するものである場合は、特許権の侵害の成立を認めるというものである。軸が「六角柱状」でも「五角柱状」でも、鉛筆が転がり難く、机などから落ちてしまうのを防止できるという同じ作用効果を発揮すると判断されるので、均等論が適用される可能性があると思われる。
ただし、均等論はあくまでも例外的な考え方であり、実際の特許権侵害訴訟においては簡単には認められないので注意が必要である。

特許権を侵害するか否かの判断手法についてごく簡単に説明したが、実際の判断は相当に難しいことが多く、専門家に相談することが必要である。

自社の商品名やシンボルマーク(図形)について商標登録をしたいと考えています。出願書類に指定商品(役務)を記載する必要があると聞きましたが、どういう意味なのでしょうか?

商標登録は漠然と名称等を登録するのではなく、商標を使用する商品や役務(サービス)を指定して商標登録出願を行い、他人の商標権と抵触しない範囲において商標登録が認められる。商品(役務)の指定は第1類から第45類まである商品及び役務の区分に従って行う。商標登録出願において、どのような商品(役務)を指定するかは、極めて重要となる。商標登録されても指定商品(役務)が異なれば商標権の効力が及ばないからである。商標権は商標が同一・類似で、しかも商品(役務)が同一・類似でなければ効力が及ばない。従って、他の企業が同じ商標を使用しているにも拘らず、指定商品(役務)が異なることによって商標権を行使することができない場合がある。

指定商品(役務)を考える場合、次のようなことを注意すべきである。
(1)商品(役務)を多方面から捉える。例えば大豆を主原料とする食品で、菓子と捉えることもできるが、穀物の加工品とも捉えることができるようなものである場合は、「第30類 菓子」と「第30類 穀物の加工品」の両方を指定することを考慮すべきである。
(2)商品と役務の両面から考えてみる。例えば雑誌を媒体として広告を行っている場合は、「第35類 広告業」だけでなく、「第16類 印刷物」も指定すべきではないかなどの検討が必要だ。
(3)複数の役務(商品)が存在していないかを確認する。例えばホテル業を営んでいる場合、「第43類 宿泊施設の提供」がメインになるが、レストランを併設していれば「第43類 飲食物の提供」も指定する必要がある。更に、ブライダルに関する業務を行っているということになると「第45類 婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を指定する必要がでてくる。

どのような商品(役務)を指定するかは、商標を使用する商品(役務)や自社の業務内容などを踏まえてよく検討することが必要である。

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