2004年02月09日

青色LED訴訟で200億円の発明対価、認定は604億円

1.平成16年1月30日に東京地裁で青色LED(青色発光ダイオード)訴訟の判決が出た。
 この訴訟は日亜化学工業(以下、日亜という。)に対して元従業員である中村修二氏(以下、中村氏という。)(米カルフォルニア大サンタバーバラ校教授)が、日亜に勤務してときに発明した青色LEDの対価を求めて訴えを起こしていたものだ。

 判決では中村氏が発明した青色LEDに関して日亜が特許権を取得し、この特許権により日亜が得る利益を1208億円と算定している。そして、この利益に中村氏の貢献度(50%)をかけて発明の対価を604億円と認定し、中村氏が請求した額いっぱいの200億円の支払いを日亜に命じている。

 何百億円という莫大な金額が大きな話題を呼んでいるが、専門家でもこの金額を予想した者は極めて少なかったのではないだろうか。専門家の端くれとしての筆者も非常に驚くと共に、極めて希有な事例であると認識している。この金額については多数の報道機関が解説しているので、本稿では会社内において為された発明の取り扱いについて特許法はどのように規定しているのか、即ち本判決の法的な背景を説明する。


2.職務発明とは
 【1】従業者が為した発明は職務発明を含め次の3つに分けることができる。
  (1)「職務発明」
  会社の業務範囲に属し、かつ、従業者の職務に属する発明である。例えば自動車メーカーのエンジン開発を職務とする者が為した自動車用エンジンの発明は「職務発明」に該当する。

  (2)「業務発明」
  会社の業務範囲に属するが、従業者の職務に属さない発明である。例えば自動車メーカーの経理を職務とする者が為した自動車用エンジンのピストンの発明は「業務発明」に該当する。

  (3)「自由発明」
  会社の業務範囲に属さない発明である。例えば自動車メーカーに勤務する者が為した即席ラーメンの製造方法の発明は「自由発明」に該当する。


 【2】職務発明について規定する特許法35条
  (1)1項は、職務発明について従業者が特許を取得した場合には、会社はその職務発明について通常実施権を有する旨を規定する。

 通常実施権とは特許発明を実施することができる権利のことで、会社は発明者に実施料を払うことなく特許製品を製造販売することができる。ここで注意を要するのは、特許を取得した者は会社ではなく従業者である点だ。上述の判決は日亜(会社)が特許を取得しているので本項は適用されない。
 
 (2)2項は、職務発明以外をあらかじめ会社に承継させることを勤務規則等で定めても、その条項は無効である旨を規定する。

 言い換えれば、職務発明についてはあらかじめ会社に承継させることを定めた勤務規則等は有効ということになる。

 (3)3項は、職務発明について従業者が会社に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させた場合には、従業者は会社から相当の対価を支払ってもらう権利を有する旨を規定する。

 特許を受ける権利とは発明することによって生じる権利で、この権利は発明者が取得するものであって、これをもとに特許出願を行う。本項では特許を受ける権利を従業者から会社が譲り受けて特許出願をする場合と、従業者が特許権を取得し、それを会社に譲り渡した場合について規定する。

 (4)4項は、3項の対価の額は、その発明によって会社が受ける利益の額及びその発明が為されるについて会社が貢献した程度を考慮しなければならない旨を規定する。

 職務発明完成のためには、会社は従業者に給料を払い、また研究設備を提供している事情がある。従って、このような事情を考慮し、従業者が受ける「対価」を決めなくてはならない。

 青色LED訴訟では、この「対価」が焦点の一つとなった。


3.職務発明を巡る今後
 特許法35条は改正が企図されており、その内容は定かではないが会社と従業者との個別契約によって「対価」を決める旨の規定が盛り込まれるという報道もある。この改正案は今回の判決による影響を受けるのではないだろうか。

 職務発明をどのように取り扱うかは、一企業の問題に止まらず日本産業界全体の問題であり、景気回復の鍵の一つであることは間違いない。世界有数の技術立国としての地位を多くの技術分野において確立するために職務発明に関する特許法の改正に期待したい。

→関連記事はこちら(2005.5.19up トピックス)


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